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男【01】


いつもの改札。
いつもの電車。
いつもの車両。
いつもの顔ぶれ。


最近、それが変わった。
理由は、ひとつ。
マンションを引っ越したからだ。

新しい通勤風景は、なんだが新鮮に感じた。


その電車に、可愛らしい男の子が乗ってくる。
初めて見た時から、胸がざわついた。
周囲の女達が霞んでしまうくらい、彼は強烈に俺の中に焼き付いた。


今日も彼は、俺が乗る一つ後の駅から乗り込んで来た。
女達とそう変わらない小さな背丈は、すっぽりと人混みに紛れてしまい、注意していないとどこに行ったか判らなくなる。


彼は、俺が見ている事に気付いていない。
時たま彼の視線を感じることもあるが、気付かれなくても当たり前かも知れない。
同じ車両に乗る大半の男達は、周囲の女にではなく、彼に視線を向けているのだから。


彼に逢えることだけが、満員電車の唯一の楽しみだ。
もっと側に行きたいのだが、俺の方が先に電車に乗るので、どうしても奥に追いやられてしまい、側に行くことが叶わない。


彼に近寄れない。


俺以外の誰かに、彼わ奪われるかもしれない。


ジリジリとした焦燥感が身を焼く。



そして、それは現実のものとなった……。




いつも一人で電車に乗っていた彼が、男と楽しそうにしゃべりながら乗り込んで来たのだ。




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