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さくら【01】


いつもの改札。
いつもの電車。
いつもの車両。
毎日同じ顔ぶれ。


変わらない日常。
変わらない通学風景。


そこに、新しい顔が増えた。


社会人になって、通勤する為にこの電車のこの車両に乗ったのだろう。
キッチリとスーツに身を包んだその姿はやけに色っぽくて、初めて彼を見た時、僕の胸はドキリと高鳴った。


だって、本当に格好いいんだ。


短く苅った襟首。
ネクタイが締められた首元。
スーツに覆われた胸板。
靴先からですら、男の色香が滲み出しているようだった。
もちろん、顔だって格好いい。


同じ車両に乗っているOLのお姉さんや、女子高生達の視線が、こぞって彼に向けられている。
その中に混じって、僕の視線も彼に向く。


男の僕が自分を見つめているなんて、彼はきっと気付いていない。


気付かれないように、こっそりと人混みの間から見てるもの。
だって、男が男にじっと見られてるなんて、気分いいもんじゃないでしょ?


つまらない通学が、彼のお陰で楽しくてならなくなった。


そして、僕は今日も彼を見つめる為に、同じ電車の同じ車両に乗り込むのだった。




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