05
「……そうだね」
腹に添えていた手を離して、イシュヴァルトはそこに顔をそっと近付ける。
耳を押し当てると、胎児の心音が聞こえる気がした。
「ねぇ、名前考えてくれた?」
「ん?」
「あの子の……」
青は夜空を見上げた。セイレスとクレストの懐で守られた、新しい小さな月を。
いつまでも『あの子』とは呼びたくなくて、名前がないのは可哀想だと、青はイシュヴァルトに相談していた。考えておこうとイシュヴァルトが請け負ってくれたので、任せてしまっていたが、あれから、もうかなりの月日が過ぎていたので流石に気になったのだ。
「ああ。考えた」
「どんな名前?」
イシュヴァルトは少し迷うように口を噤んでから、意を決したように告げた。
「レザナス」
「レザナス……どういう意味?」
「“どこまでも澄み渡った・何物にも染まらない”という意味だ」
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