04
「う……そ……」
国外からの輸入ものが無いとは言わない。
だが、それはグランファードでは作れない塩や調味料の類だ。日常的に使うものなので高くはないが、嗜好品になると話は変わる。ドレスの生地やレース、宝石、ワインなどになると、物によってはグランファード国内で作られるものの倍以上の値段になるのだ。
最上級のものを求めるとなれば、平民の六人家族が優に十五年は遊んで暮らせるような高額な値段になる。いくら貴族とはいえ、それを何反も求めるとなると、決して安い買い物ではないのだ。
「本当だ。これは有名な話だぞ。どこの誰に訊いても『ああ、あれか』と肯く。腹の子が動かないと拗ねる私の方が、どれだけかマシだろう?」
青は、コクコクと首を縦に振った。
叔父と同じことをするイシュヴァルトを想像するだけで、青の表情は強張った。
イシュヴァルトは片方の手を腹に当てたまま、肩の辺りまで伸びた青の艶やかな髪を撫で梳いた。
「どんな子になるかな……」
「どんな子って?」
「セイに似た黒い髪や瞳に似るのか、私のような金髪碧眼になるのかってことだ」
腹に乗ったイシュヴァルトの手の上に、青は己のそれを重ねた。
「楽しみだね」
「ああ。男でも女でも、ふたなりでも。どんな髪の色でも瞳の色でもいい。元気に生まれてくれれば、それで充分だ」
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