03
「私などまだマシな方だぞ。叔父などはもっと凄かった」
「叔父様が?」
ああ、とイシュヴァルトは肯いた。
イシュヴァルトの叔父といえば、一人しかいない。
全国王の弟であり、現在の青の後見人であるリブンヴァルトその人だ。
「遅くに出来た子だったから余計だったんだろうな。叔父は、まだ産まれもしない赤子を、将来立派な騎士にするんだと、馬を用意したんだ」
「……馬」
生まれる前から馬を用意したところで、子供が乗れるようになるまでに数年かかる。それまでに馬は年老いてしまい、乗馬には不向きになってしまうだろう。そして、更に青を唖然とさせたのは、初陣の為の鎧甲まで作ろうとしていたらしいという事だった。
子供の体がどれだけ大きくなるか判りもしないのに、だ。
「張り切ってあれこれ用意したはいいが、いざ産まれてみると、女児だったんだ」
「──女の子?」
「そう、産まれた子は女だった」
馬も剣も鎧甲も、何もかもが無意味になってしまったのだ。
「叔父様は、がっかりなさった?」
イシュヴァルトは、苦笑を零した。
「いや。赤子が女児だと判ると、今度はドレスを作る為の最上級の布を、国外から取り寄せた」
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