02
納得できない様子のイシュヴァルトだったが、いつまで経ってもピクリともしない腹に諦めの吐息を零した。
「そうか……」
心なしか力のない声で同じことを呟きながら手を離す。
すると、
「あ……」
ぼこん、と目で確認できる程の強さで胎児が再び腹を蹴った。
「私が手を離した途端に動くのか、おまえは」
イシュヴァルトは、恨めしい表情で青の腹を眺めやる。子供じみたその行為が、青はおかしくて仕方がなかった。
「何を笑っている?」
腹の子だけでなくその母親にまで笑われて、イシュヴァルトは不機嫌そうにじろりと青を睨み付けた。
「べ……別に」
「別に、という感じではないな。はっきり言え、セイ」
睨み付ける瞳には、だが優しさが宿っていた。
「……だって」
まさか、イシュヴァルトがそんな態度を取るなどとは、思いもしなかったのだ。
父親になると誰もがこんな風になるのだろうか。
自らの腹に子を宿す青には”父親の気持ち”が分からない。
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