[携帯モード] [URL送信]
02
納得できない様子のイシュヴァルトだったが、いつまで経ってもピクリともしない腹に諦めの吐息を零した。


「そうか……」


心なしか力のない声で同じことを呟きながら手を離す。
すると、


「あ……」

ぼこん、と目で確認できる程の強さで胎児が再び腹を蹴った。


「私が手を離した途端に動くのか、おまえは」


イシュヴァルトは、恨めしい表情で青の腹を眺めやる。子供じみたその行為が、青はおかしくて仕方がなかった。


「何を笑っている?」


腹の子だけでなくその母親にまで笑われて、イシュヴァルトは不機嫌そうにじろりと青を睨み付けた。


「べ……別に」


「別に、という感じではないな。はっきり言え、セイ」


睨み付ける瞳には、だが優しさが宿っていた。


「……だって」


まさか、イシュヴァルトがそんな態度を取るなどとは、思いもしなかったのだ。
父親になると誰もがこんな風になるのだろうか。
自らの腹に子を宿す青には”父親の気持ち”が分からない。


[*前へ][次へ#]

2/7ページ


あきゅろす。
無料HPエムペ!