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「助けは来ぬ」

覇久毘の言葉に、珠華の抵抗がぴたりと止んだ。
助けは……来ない。

現実を、突き付けられたような気がした。
どれだけ求めても、誠志には届かない。

「そう……それでいい」

大人しくなった珠華の内着を、覇久毘はゆっくりと開いて行く。
日に当たらない体は、透けるような美しい肌をしていた。
ぞろりと胸を、節ばった男らしい大きな手のひらで撫でられる。
珠華は、放心したように虚ろな瞳で寝台の天蓋を眺めていた。

「美しい……」

覇久毘の漏らす感嘆の声も耳に入らない。
嫌悪から生理的に浮かぶ涙が、頬を流れ落ちていく。その感触を追うように、珠華は視線を横に向けた。

ちかり

と、朧な視界に何かが光って見える。

な…に……?

それが何かを見極めようと、意識をそちらに向かわせる。
寝台の横に置かれている小棚の上に、燭台があった。

あれ…じゃない。
もっと……。

燭台の足元に、果実の盛られた籠があり、その中に果実を剥く為の小刀が添えられていた。それが燭台の光を反射して輝いていたのだ。
輪郭がぼんやりしてはっきり判らないそれが、小刀だと判った珠華は、咄嗟にそれを握り締めた。

「つっ!!」

覇久毘が小さく呻く。
鋭い痛みが頬を襲ったのだ。
拘束が緩んだのをみて、珠華が寝台の端までさっと逃げる。

「珠華……」

赤く染まった手のひらを、覇久毘は珠華に伸ばす。

「近寄らないで下さい」
両手にしっかりと小刀を握り締め、珠華が呟く。
「それを、放しなさい」

放す訳にはいかなかった。
覇久毘に体を差し出す事は、珠華にはどうしても出来なかった。

心に、誠志がいる限り──。

このまま覇久毘に無理矢理体を開かれるくらいなら、いっそ。

珠華は鋭い刃先をゆっくりと喉にあてがう。

「よせっ、珠華!!」

躊躇いはなかった。
両手に力を籠めると、一気に貫いた。

「珠華!!」

覇久毘の悲鳴にも似た声が脳に響く。

──誠志。

すうっと体が冷たくなって、意識が薄れていく。
「珠華、珠華っ!!」

切迫した覇久毘の呼び掛けが聞こえるけれど、珠華にはどうでもよかった。

鮮血に染まった寝台の上に、珠華はゆっくりと倒れ臥した。

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あきゅろす。
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