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03-3
眠たげな瞳を一生懸命にイシュヴァルトに向ける青に、愛しさが募る。

「私の、妃(つま)になってくれないか?」

結婚の申し込みを行う場合、申し込む側であるイシュヴァルトは、申し込む相手の青へ、その旨をまずは伝えなければならない。
申し込まれる側の青は、彼の意志を尊重し、きちんと立ち上がってそれに臨む。
申し込む方のイシュヴァルトは、青の足元に跪き、定められた言葉を告げる。騎士ならば、その上更に己の命と同等の重みのある剣を、抜き身のまま、柄を相手に向けて捧げる。

『貴方を守り、貴方の為になら命を賭(と)す覚悟』

という意思表示だ。
申し込みを受け入れるならば、申し込まれた者は、その柄を受け取り、相手に同じ様にして返す。

『貴男の為に身も心も捧げます』

という、申し込んだ男性の気持ちを受け入れると同時に、操を捧げるという返事になる。
申し込むにもそれなりの手順と順序というものがある。

だが、寝台の上での申し込みに、順序も何もあったものではなかった。

「……え?」

聞き間違えたのかと思ったのか、青が問い返す。

「私の妃になってくれないか?」

イシュヴァルトは、青の耳元で再度その言葉を紡いだ。
青の眠気眼がぱっちりと見開き、かぁっと頬が朱に染まる。

「え……あ……あの」

「妃になって欲しい」

「あ……イシュ…」

耳朶に唇で触れながら、何度も囁く。

「セイ、私の妃に……」

ピクリと青の体が震えた。
囁きに、体が熱を持ち始めたのを、イシュヴァルトは見逃さなかった。

「セイ……」

首筋を撫で上げてやると、潤んだ瞳で、力なくイシュヴァルトを睨み付けてくる。

「イシュト……や」

「『うん』と言うまで止めない」

するりと上掛けの中に侵入しかけた手を、青が押さえる。

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