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02-4
周囲はそうはいかない。

イシュヴァルトの父親の代になってから、かなり改善されはしたが、それでも因習は中々廃れることはない。
今現在、イシュヴァルトと青の恋愛が黙認されているのは、青が《双月の巫》の片割れだからに他ならないのだ。
青を妃として迎えるにあたり、もし、青が子供を身ごもれない体だとしたら、イシュヴァルトがどれ程望んでも、この結婚は強制的に白紙に戻されるだろう。
下手をすれば、青を密かに監禁される可能性もある。

イシュヴァルトは様々な不安を抱え、それを恐れるが故に、青に言い出せないでいるようだった。
リードグレンはその不安を正確に読み取った。
公爵家の家長として生まれたリードグレンは、国王という立場の不自由さを、嫌というくらいに熟知していた。
絶大な権力を得ると引き換えに、自由を奪われる。起床時間から朝食、昼食などの細やかなものから、夜伽の相手、果ては結婚相手まで宛がわれる始末。自由恋愛などもってのほかだ。その上、国という重責を背負わされる。

「事情を話して、コウからそれとなく訊いて貰うか?」

イシュヴァルトを好きなだけじゃ、妃は務まらない。
《双月の巫》である青になら、家臣は忠誠を誓うだろう。
その件に関してはさして問題ないだろうが、嫉妬や嫉み、世継ぎを産めなかった場合の周囲からの沈黙の非難を、青は受け止められるだろうか。

その覚悟が、青にはあるのか。



青が同性との婚姻を受け入れてくれるのかという不安以上に、イシュヴァルトを悩ませる最たるもの。

リードグレンは、取り除いてやることの出来ない複雑な問題に、そっと拳を握り締めた。









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