02-3
「参った……」
イシュヴァルトは肩に手を当てて、ぐるりと首を回した。
「まったくだ」
リードグレンも首を回して肩の凝りを解すと、どっかりと寝椅子に寝転んだ。
諫言という名の説教は、あれから小一時間程も続いた。
「いいですね、きちんとお話して下さいよ! 明日報告して頂きますからね」
と、念を入れてから、宰相の身で何かと忙しいクレウィーアは、慌ただしく退出して行った。
忙しいなら説教などしなければいいのに、と思わないでもないが、それがクレウィーアの性分なのだから仕方がない。
「ちゃんと言えよ」
「五月蝿い」
イシュヴァルトは立ち上がって外を見た。
その話は終わりだと、言外に告げたつもりだったが、リードグレンは簡単には引き下がらなかった。
「おまえ……もしかして恥ずかしいのか?」
「……違う」
にやにやと、からかいの笑みを浮かべるリードグレンに、イシュヴァルトは恨みがましい瞳を投げかけたが、振り返ったときには、その表情は物憂げだった。
「『怖い』と言ったら、笑うか?」
自嘲的な笑みが浮かぶ。
からかっていたリードグレンの表情から、それがゆっくりと退いていく。
「セイは……私の求婚を受け入れてくれるだろうか」
お互い想い合っている事は間違いがない。それは、青の言葉や態度の端々からも感じられる。
それでも、一緒にいることを望んでくれていても、夫婦となることまで望んでくれているかは解らない。
青はふたなりだが、男性として育ってきた。
それがイシュヴァルトを躊躇させる。
もし、拒否されたら……と。
それに、正妃となったら世継ぎを望まれるのは必至。
子供を産めようが産めまいが、イシュヴァルトにはどうでもいい事だ。
青であるから、共にありたい。その証として妃(つま)として迎えたい。
ただ、それだけなのだが……。
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