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気もそぞろになりながらも、今日中に処理してしまわなければならない急ぎの書類を漸く片付け終えたイシュヴァルトは、疲れた肩を軽く拳で叩いた。
「終わったな」
「今日の分は、な」
寝椅子にふんぞり返り、嫌みったらしい言葉を吐くリードグレンを、イシュヴァルトはジロリと睨み付けた。
「おまえ、いつまでここにいる気だ」
さっさと仕事に向かえと投げつけた言葉は、さらりと受け流された。
「部下がしっかりしてるから、俺のすることが無くってね」
「それは私が無能だと言いたいのですね」
突然新たな声が割り込んだ。
驚いて扉の方を見やると、クレウィーアが書類を手に部屋に入ってきたところだった。
クレウィーアは冷ややかな視線をリードグレンに投げつけると、手にしていた書類を執務机の上に丁寧に置いた。
「や、そういう意味じゃなかったんだけどな」
「そういう意味もどういう意味もないでしょう。そうとしか取れませんよ、今の発言は」
参ったな、と頭を掻くリードグレンはきれいに無視してイシュヴァルトに向き直る。
「ところで陛下。セイ様を正式にお迎えする件ですが」
「ああ。何か問題でもあるのか?」
「そろそろお衣装の手配をしないと、間に合わなくなります」
「ああ、そうだな」
「なぁ」
「なにか?」
邪魔をするなと、クレウィーアにじろりと睨み付けられたリードグレンは一瞬怯む。
が、ずっと気になっていたことを訊いてみることにした。
「いや……陛下はセイに求婚してないんじゃないのか?」
「本当ですか?」
気まずそうに顔を逸らすイシュヴァルトに、クレウィーアの眉間が微かに寄せられた。
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