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01-4


「……じょ…だん?」

「冗談なんかじゃないよ。じゃあ訊くけど、生理いつ来た?」

「いつって……」

青は完全な女性体ではないものの、不定期ながら月のものが訪れる。大抵は二、三ヶ月に一度の割合だ。
前回は、紅が家出をする前だったので、そろそろふた月が過ぎようとしていた。
だが、不定期に訪れるものだけに、青は今まで気にしなかったのだ。

「……まさか」

思い当たる節があるような青に、紅はじっと頷いた。

「恐らく間違いないよ。吐き気にしろ、微熱にしろ、倦怠感にしろ、妊娠初期の症状に類似してるもの」

紅が何故それ程詳しいのかと言うと、ひとえに青の為だった。
青が両性具有者だと知った時、紅は万が一の場合に備えて、月のものや妊娠の知識を本や母親から聞いて勉強していた。少しでも知識があるのと全くないのとでは雲泥の差だからだ。
その万が一の知識が、まさか役に立つ日が来るとは思ってもいなかったが。

「……う……そ」

青はギュッと震えだした体を、その腕で抱きしめた。
男として育ってきた青は、いくら月のものがあっても、妊娠や出産など考えたことも無かっただろう。
胎内に自分ではないものが宿っているかもしれないという得体の知れない不安は、どうやっても拭い去れない。

「医師に診てもらわないと、はっきりしたことは判らないけど」

「……どうしよう……どうしたらいい?」

動揺して振るえる青を、紅はそっと抱き寄せた。

「青は、イシュトの子供が欲しくないの?」

「…………」

青だって考えなかった訳じゃない。
イシュヴァルトの子供を産む想像を、幾度もした事はある。
けれど、それはあくまでも想像でしかなくて、現実に起こり得る事だなどと、これっぽっちも思っていなかった。

(イシュトと僕の子供……)

青は複雑な心境のまま、宿っているかも知れない胎児を、腹の上からそっと撫でた。
その瞬間、不安だった気持ちはどこかに飛んでいってしまった。

「紅……まだ、誰にも言わないでね」

穏やかに微笑みながら愛おしそうに腹をさする青に、落ち着きを取り戻したことを知った紅は、ほっと心の中で安堵した。

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