[携帯モード] [URL送信]
01-3


(気を引き締めなきゃ。青の体の変調もあるし……)

紅は幸せで、どこか浮かれている自分がいることを自覚した。
胸の内に過ぎった考えが、もし青の身に起こっているとすれば浮かれてなどいられない。

「そろそろ時間だ」

リードグレンが席から立ち上がり、イシュヴァルトの意識を仕事へ向けようとする。
イシュヴァルトは諦めたように溜め息を零した。

「その皿の上のものは食べろ、いいな」

「僕がちゃんと食べさせるから、安心して」

立ち上がったものの、青を心配して中々仕事へと向かえないイシュヴァルトに、紅は任せるようにと頷いた。
その言葉に少しは安心したようだが、イシュヴァルトは、いかにも仕方なさそうにリードグレンに引っ張られながら席を後にした。

「青、食べられる?」

「……食べたくない」

心なしか青白い顔をして、青は食べかけの料理の乗った皿を遠ざけた。

「気持ち悪い……」

やはり、という思いが紅の中に浮かんだ。
先程はイシュヴァルトやリードグレンが居たので、迂闊なことは言えないと口を噤んでいたのだ。

「気持ち悪いって、匂いが気持ち悪い?」

なぜそんな事を訊くのかと不思議そうにしながら、青は肯定した。

「……ねぇ、最近やたら眠くなったりしない?」

「うん。多分風邪のせいだと思うんだけど」

真剣な表情になってじっと見つめてくる紅を、青は戸惑ったように見つめ返した。

「もしかして、できたんじゃないの?」

「できた、って何が?」

紅が何を言いたいのか、青には判らなかった。

「赤ちゃん」

ヒュッと青の喉が鳴った。
先程の複雑な表情は、これを言いたかったのだと青は遅ればせながら気付いた。

[*前へ][次へ#]

3/86ページ


あきゅろす。
無料HPエムペ!