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01-2


「夜中涼しかったことがあったでしょ? どうやらその時に風邪をひいたみたい。体も怠いから」

「本当に風邪?」

横に座る紅が、青の額に手を伸ばした。

「うーん、ちょっと熱あるかな?」

手を引っ込める紅が複雑そうな表情になる。
青はどうかしたのかと問いかけようとしたが、それは叶わなかった。イシュヴァルトが先に口を開いたからだ。

「セイ、なぜ言わなかった」

心配そうにしていたイシュヴァルトが、眉をしかめた。

「たいした事ないって思ってたから」

「たいした事無くても、きちんと言え」

少しばかり厳しい表情でイシュヴァルトに言われた青は、しゅんと項垂れた。

「……ごめんなさい」

こちらに来たばかりの頃、青は頻繁に体調を崩していた。
この半年ばかりは喘息の症状が現れないからいいものの、もし発作が起こったとしたら、この世界の医師には治療する術を持たないのだからイシュヴァルトの心配は尚更である。

「まあ、まあ。セイだって子供じゃないんだ。自分の体調くらい、ちゃんと判るよな」

落ち込んでしまった青を可哀想に思って、リードグレンが口を挟む。

「何かあってからでは遅い」

だが、イシュヴァルトは引かない。そればかりか、私達の問題に口を挟むなと、きつい眼差しをリードグレンに投げてくる始末だ。
リードグレンは肩を竦めて茶器に手を伸ばした。

「これはコウにも言えることだ。おまえ達の体は我々と変わりはない。だが、セイの持つ持病は、少なくとも我が国で認められたことのない病(やまい)だ。その病に対する治療方法も薬も、この世界では確立されてない。おまえ達の体に、この世界の環境がどう影響するか解らない以上、細かな不調もきちんと報告してくれなくては困る」

確かにこの世界に来てから、青の喘息の症状は激減し、今ではまったく現れない。
この世界の環境が合っているからだろうと単純に考えていたが、イシュヴァルトが言うように、いい影響ばかりがある訳ではないかもしれない。
こちらの人々には免疫を持っているから罹らないような病気でも、青や紅もそうとは限らない。
抗体があるかどうか、ここの医学では判明のしようもない。

幸運なことに、その様な病状は今まで出たことはないが、これからもそうだとは言い切れない。
彼等にとっては些細な風邪で済むものが、青と紅には致命的な病気になる可能性だってあるのだ。

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あきゅろす。
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