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良く晴れた昼下がり。
穏やかな昼食のひと時を彼等は過ごしていた。
昼食を摂る場所にも、席に着く顔ぶれにも変化はない。
それこそ、『いつもの様に』という言葉が当てはまるくらいの日常がそこにはあった。
昼食を共に、と提案したのはイシュヴァルトだ。
紅がリードグレンの屋敷へと居を移したのは、ひと月前のこと。
生活の拠点が違うようになってから、青と紅が共に過ごす時間は極端に少なくなった。
いつまでも同じ道を進める訳ではない。
青もそれはきちんと理解しているし、青が理解しているという事実を、イシュヴァルトもちゃんと解っている。
けれど、頭で納得していても、心がそれを受け入れられないようだった。
今まで側に在るのが当たり前だった存在が、そこに居ないのだから、寂しく思うのも仕方がない。
紅がいなくなってから、青はふとした拍子に寂しげな表情を見せるようになった。
イシュヴァルトの前では平気な振りを装ってはいるが、無理をしているのは誰が見ても明らかだ。
離れる時間が急に増えるのは可哀想だと、イシュヴァルトはこの提案を持ちかけたのだ。
紅の方でも寂しい気持ちが強かったのだろう。ふたつ返事で提案を受け入れた。
紅が喜ぶなら、リードグレンに否やはない。
そして、気安い者だけの集まる昼食会が毎日開かれるようになった。
昼食を摂る青の手が止まったのを、いち早く気付いたのは紅だった。
「もう食べないの?」
青は手に持っていたカトラリーを、皿の上に戻していた。
その皿には、料理が半分以上も残ったままだ。
「……うん」
「昨夜も今朝も、あまり食べてなかっただろう。昼食くらいはきちんと食べろ」
青の皿を目に捉えて、イシュヴァルトが心配そうにする。
「食欲が無いんだ」
「いつから食欲ないの?」
「三日くらい前から、かな」
青自身はっきり判らないらしい。
なんとなく食べ物を受け付けなくなっているなと気付いたのが、それくらい前のようだ。
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