03-2
そう、自分でも判っている。
誰か一人の言動に右往左往しているなんて、こんな自分は初めてだ。
だからこそ気付いた。
本気なのだ、と。
紅が同性だという問題が些細な事にしか思えないくらい、本気なのだ。
「紅が、好き?」
ハッとリードグレンは顔を上げた。
紅と瓜二つの顔が、リードグレンを見つめてくる。
瓜二つなのに、リードグレンは青を紅だと間違えた事は一度もない。イシュヴァルトも青と紅を間違えない。
黙って立っていたら、両親ですら間違えるのにと、いつだったか紅が苦笑していた事を思い出した。
「ああ、好きだ」
青を守る為に自分の事は二の次な紅の姿を、知らず知らずのうちに目で追うようになったのは、いつの頃からだろう。
「愛している」
強い紅。
だが、それは両刃の剣。
誰かの為の強さは、それを向ける相手を失った途端に不安定になる。
いま紅はとても不安定だ。
風が吹けば、吹き飛ばされて手の届かない場所へいってしまいそうな危うい雰囲気がある。
それに気付いているのは、リードグレンと、おそらくは青だけだ。
「そっか」
青は嬉しそうに笑った。
「いいのか?」
「何が?」
「俺が、コウを奪っても」
青は少し寂しそうに微笑んだ。
「正直な話、寂しいとは思う。でも……今の紅を支えられるのは、きっとリードだけだから」
僕じゃ、紅を支えてあげられないから、と青は続けた。
紅の不安定の原因が己である事を、青は誰に教えられるまでもなく知っていたようだ。
「紅ね、もとの世界に帰るつもりでいたみたい」
リードグレンは愕然とした。
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