03
青の元へ、珍しい客がやって来たのは、翌日の午後だった。
03.
共にお茶を楽しんだりした事はあるが、それはクレウィーアや紅も一緒だった。
彼が単独で青を訪れたのは、これが初めてだ。
「話がある」
いつもの、どこか人を食ったような態度はナリを潜めていた。
「はい」
真面目な話なのだと青は感じた。
リードグレンに席を勧めたが、青と紅が使用している部屋では拙いと言われて、リードグレンのあてがわれている仕事部屋へと移動した。
「すまんな」
リードグレンはお茶の用意をしていた女官が下がってから、ようやく声を発した。
「いえ。あの、それで話って……?」
リードグレンは無言のまま余所を向いた。
「コウの事だ」
「はい」
予想はしていたから、青は特に驚かなかった。
リードグレンが紅を気にしている事を、青は知っていたから。
「コウは……ここから出て行く気なのか?」
「え?」
はっきりと物を言うリードグレンが言い淀む様を、青は珍しそうに凝視した。
「……変、か?」
「え?」
リードグレンは苦笑を浮かべ、茶器を取り上げて口元へ運んだ。
「俺がコウを気にするのが、さ」
青が首を傾げると、リードグレンの苦笑が深くなった。
「珍獣を見るような目で見ている」
「あ……いえ。あの……」
さすがに失礼だったと、青は今更ながらに慌てた。
「そうではなくて……」
説明したいのに、上手い言葉が見つからず、青は困ってしまった。
「いい、判っている。俺の態度が珍しいんだろ?」
「……はい、すみません」
青は、申し訳なさそうに小さく謝った。
「謝る必要はないさ」
リードグレンは手にしていた茶器を元に戻した。
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