02-2
「……紅」
「だから、僕は探すよ。帰る方法を」
「離れ離れになるってこと?」
不安そうな表情の青の髪を、くしゃくしゃと掻き混ぜた。
「もう」
ぶつぶつと文句を言いつつ、青は、ぼさぼさになった髪を手櫛で整える。
「まだ帰れるとは決まった訳じゃない。それに、離れ離れになっても大丈夫。青にはイシュヴァルトが居るし、僕達の心は重なったままだ」
(嘘だ)
紅は思った。
いくら心が重なっていても、離れてしまった寂しさは拭えない。
青が石柱に封じられた時の喪失感が、胸に残り火となって未だにくすぶっている。
(また、あの喪失感を味わわなければならないのか……)
それに──。
一瞬、胸に過ぎった人物の存在が、紅を躊躇させる。
「駄目だよ」
「え?」
「だって《双月の巫》は二人揃ってないと駄目なんだよ?」
「あ……」
うっかりしていた。
「紅が帰っちゃったら、この国はどうなるの?」
ゆっくり、ゆっくりと時間を掛けて、この国は荒廃の道を歩むだろう。
「両親への心配も判るよ、僕だってそうだもん。でも、この国の巫覡として立ったのなら、その責任も考えないと」
青は変わった。
流されるままの受け身だった頃とは違い、まっすぐに前を向いて歩いている。
そうさせたのは、イシュヴァルトの存在。
「そうだね」
紅はもう一度
「そうだね」
と呟いた。
心のどこかで、帰らなくてもいいのだと、安堵している己がいる事に、紅は気付いていた。
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