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04.


「今日はこのくらいにしましょうか」

ぱたりと本を閉じたクレウィーアに、青と紅はほっとひと息吐いた。

「疲れたー」

同じように開いていた本を閉じた紅は、ぐったりと机に懐いた。
この世界に着てから、ふた月が過ぎていた。
行く場所も無く、言葉も知らない二人は、しばらくここに世話になる事になった。
言葉が不自由だと、意志の疎通がままならないと、青と紅は言葉を覚える事にした。いつか帰るつもりでいても、言葉を知っておいて損はない。
イシュヴァルトは、雰囲気の穏やかなクレウィーアを、教師として選んでくれた。
忙しい中、無理矢理に時間を作って青と紅に言葉を教えてくれた。
イシュヴァルトがこの国の王であること、クレウィーアが宰相であることなどを、二人は最近ようやく理解したばかりだ。
今日も円卓を囲んで、三人の勉強会が開かれていたのである。

「青君も疲れたでしょう?」

紅の行動にクレウィーアが微笑む。

「いいえ、僕はまだ大丈夫」

双子でも、同じものが得意とは限らないらしい。

「青は勉強得意だもんね」

「そうなんですか?」

青は曖昧に頷いた。
勉強が得意な訳ではない。ただ、始終ベッドに縛り付けらる生活を強いられてい青には、本を読む以外にする事がなかったのだ。
クレウィーアは円卓の中心に置かれていたベルを取り上げて軽く鳴らした。勉強会を終了し、お茶の時間にするという合図だ。

「それにしても、お二人共すごいですね。まったく単語すら判らなかったのに、ふた月の間に、簡単な日常会話くらいは、こなせるようになっているのですから」

「そうでもないよ。少しでも早く覚えて、二人だけになっても生活して行けるようにならないとね」

「そうだね」

クレウィーアが驚いた表情で口を開きかけたが、ノックに遮られてしまった。

「はい」

「失礼致します」

女官が、茶器を乗せた銀盆を携えて部屋へ入って来た。

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あきゅろす。
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