03-4
徐々にだが、呼吸が楽になってくるのを感じて、青は体の力を抜いた。
紅にもそれが伝わり、強張っていた表情が緩んだ。
「青、大丈夫?」
「うん……」
ぐったりと紅の肩に凭れ掛かる。
額に浮かんだ汗を、紅の手が拭う。青は気持ち良さそうに、そっと瞼を閉じた。
『もう、大丈夫なようだな』
二人の様子を見守っていた男達にも安堵の表情が覗く。
「ごめんなさい……えっと」
心配を掛けてしまったようだと、青は小さく謝った。男はクスリと笑みを零した。
『イシュヴァルトだ』
「イシュ……?」
『イシュヴァルト』
「イシュ……ヴァルト?」
『そうだ』
ふわりと微笑む男の瞳は、優しい色に満ちていた。
「僕は、青」
『セイ?』
うん、と青は頷き、
「こっちは、紅」
と、紅を指差す。
「ちょっと、青!?」
いきなり自己紹介を始めた二人を、面食らった顔で見ていた紅は、自分の名前まで告げられて眉を顰めた。
「駄目だった?」
悪意のない澄んだ表情に、紅はがっくりと肩を落とした。
「……駄目って言うか……もう、いいよ」
そんな簡単に、信用しないで欲しいのだが、青にそれを言っても無駄である。
自分がしっかりしていればいいことだと、紅は、早々に諦めて口を閉ざした。
『コウ……。セイとコウ、か』
男は何度か口の中で反芻していたようだった。
『こちらも紹介しよう。あのデカい男がリードグレン、隣の長髪がクレウィーアだ』
言葉から意味を掴むことはできなかったが、何となく言っている意味は判った。
「リードグレンとクレウィーア」
名前を口にする毎に、視線を向けると、リードグレンもクレウィーアも、にこりと微笑んでくれた。
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