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今更素直になれる訳ない


「ねぇ瑞城…」

「はい?」

「特別って、何?」





 僕の問い掛けに元親と顔を見合わせ、困惑。特別になりたい。
でも、特別って?



「唐突な上抽象的な質問ですね…」

「明白な答えが欲しいわけじゃないよ。ただ、」



 瑞城の意見がききたくて。



「俺の意見ですか、」



 こくん と頷く。そう、
そうですねぇ…
なかなか真剣に考えてくれているらしい。





「――…月並みかもしれないけど、他と違うっていうことじゃないか?
一番じゃなくていい。
一番になることだけが特別じゃないと思う。一番は別にあって、でも、他の何ものにも代え難い。
そういうものが特別なんじゃないかなと、俺は思うよ。」

「一番じゃなくても?それでも特別?」

「一番が他と違うのは当たり前だろ?
一番じゃないのに周りと違うっていうのは本当に“特別”なんじゃないかな。」




 僕の一番は瑞城と元親だ。
これは譲れないし、きっとこれからも変わらない。




でも、

名前の特別になりたい。

そう思った。




 つまり、僕は名前のことを“特別”だと思ってるの?








だからって、嗚呼

今更素直になるなんて






きっと、そんなのできっこないよ









「瑞城…」

「今度はなんですか?」

「素直のなり方教えて。」



ガシャン



「瑞城、倒したぞ。」

「あ、ああ。素直?璃宮がか?」



バサッバサバサッ



「璃宮が…素直……?」

「何その驚き…」



 瑞城はカップを倒した。
元親は持ってた書類をファイルごと落としている。
失礼な!



「璃宮、それは……  」

「…ほんとに?」

「俺もそれがいいと思う。そしたら…」

「……。」





――…



「名前、」

「…こんにちは?」

「なんで疑問系なの。」



 その間はなんなのさ!



「だって、怪我してないじゃないですか。」

「…したもん。」



 ずいっと近づく上條隊長。
近い!顔近い!



「睫毛入った。」

「…医務室なんだと思ってるのよ。」



 目薬なり、洗うなり、なんなりできると思うんだけど。



「名前に、やってもらいたかったから!」

「え。」

「…何。悪い?」

「どうしたんですか!」

「あの、ね。だから!今日は、素直のなり方教えてにもらいにきたの。」








 何がだからなのか、さっぱりわからない。
―じゃなくて。






「そんなの、……私も教えて欲しい。」








《名字さんに訊くといいよ》

《それで返事が、》







「、んん……!」






「な、ななに―…」
「私も知りたい、なら!」









《キスしろ。それでなんとかなる。》



『ええ!』

『元親、お前いつもそうやってオトしてたのか…。』

『キスしたら、なんとかなる。』

『女遊びも大概にしろよな…』



「名前、」

「……」



「んッ…」



 やられっぱなしは性に合わない。
だから、仕返し!






「上條隊長のこと、キライじゃないですよ?」

「…馬鹿名前。」




 素直じゃないのも、余裕が欲しいのも。お互いさま。






「ねぇ、名前は僕の特別で、僕は名前の特別でしょ?」

「…そういうことにしてあげる。」
「馬鹿名前!」



―でも、ネクタイは私が結んであげる。
他の子には頼まないでよ!





 これを言える日が来るといいな。



fin


あとがき→




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