ムース× 此方に向けて伸ばされた手、無造作なような誘っているような。掌を上にして伸ばされた手に、何をしたいのかはかりかねた。まさか手相を見せているわけではあるまいと。相手の顔色を窺い見れば薄いレンズ越しに視線が絡んで可笑しそうに笑む。一体何が面白いと言うのか、俺には皆目見当がつかない。 「何がしたいんだ?」 「なんじゃろうな」 「なあムース」 「乱馬はどう思う?」 わかんねえから聞いてんじゃねーか。 ムースは未だ笑んだまま。伸ばされた手もそのままで。 戸惑いながらも俺がそろそろと目の前に差し出されたムースの掌へと自分の手を重ねると。脱力したそれを軽く握り、まるで悪戯が成功したかのように。相手の両眼がゆうるりと細まる。 「手を出しただ」 「…、違うのかよ?」 意味がわからなくて少し怯んだ。謎かけめいた曖昧なやり取り。 特段理由もなく手を差し出されれば誰だって握手か手を乗せろという意味合いで受け取るだろう。案の定俺の選択肢は間違いではなかったようで。 正解だと静かに発せられると同時に俺の手を強く握って、引き寄せて抱き締めようとでもするかのように腕を引かれる。 「、なんだよ?」 俺は此処を動きたくはない。 だから足と腕に力を込め。若干前のめりになりそうになりながらも踏みとどまった。目の前の男の行動の全てが理解出来ない。何を考えているのか。訝しみ、顔をしかめ問う俺に、ムースはと言えば特に気にした風もなく。 「わからんか?」 またそんなハッキリしない。そもそも疑問を疑問で返されること程煩わしいことはないのだ。( 苛つく 焦る、 )一体なんだというのだろうか、この状況は。 早く掴まれた手を振り払ってしまわなければいけない気もするし。そんなことをしてしまってはいけない気もする。( どうすれば良いのかわからない ) いやに余裕のない思考の中、ただじんわりと伝わる相手の体温だけが何処までも正確だった。 ああやはり振り払うべきなのだろうか。何故たかだか手を握られたくらいで俺がこんなにも悩まなければいけないのだ。考えなければいけないのだ。確かに俺も手をだしてしまったけれど、そうなるのを意図的に仕組んでいたのは紛れもなく未だ俺の手を握り締め離さない、この男で。 「ただ、触れたかっただけじゃ」 不意に一層の微笑みで以て紡ぎ出された言の葉のなんて薄ら寒い。輝くような笑顔でそんなことを言われたなら大抵の女はいちころなのではなかろうか。そう頭の片隅で考え深く息を吐いた。( 残念ながら俺は男だ。 ) しかしそれは俺にとって何の意味もないことなのだ。 ――――――――――――― 文の書き方がどんどんわからなくなってくる。多分いつか書き直します。 戻る |