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さわむらくんとはるいちくん


「そういやお前、弟くんとは全然喧嘩しねーよな」


と、倉持に言われた沢村は、確かに降谷や金丸とはしょっちゅう口喧嘩をしているが春市とはやり合ったことがないという事実に初めて思い至る。


それに、最初から春市だけは沢村に友好的だった(降谷もだがあれは無関心に近かったから除外)。
皆が沢村に呆れたり馬鹿にしたり、そして試合に腐った連中が八つ当たりのような敵意を向けたりする中、春市だけは一緒に“野球”をしてくれた。
あの試合の後から春市は沢村の親友になった。


翌日の夜、一緒に夕食を取りつつ倉持に言われたことを春市に話すと、そうだね、と春市は苦笑混じりに頷いた。


「でも栄純くんは誰とも喧嘩してないじゃん」

「え、してるって。降谷とか金丸とか」

「あれはじゃれあいでしょ?時々見てて鬱陶しいけど」

「ええー?そんなことねーって。てか今何気に毒吐いた?」

「気のせいじゃない?」


しれっと味噌汁を啜る春市。
でもその毒にも悪意はないのはわかってるから、慣れた沢村には痛くも痒くもない。


「俺と栄純くんが本気の喧嘩するときは、きっと栄純くんが俺を怒らせたときじゃないかな」

「なんで?俺が怒るかもよ?」

「あはは、俺が怒らせるようなことすると思う?」

「……絶対しないなー」

「でしょ?それに栄純くんは誰かにムカつくことはあっても本気で憎んだり嫌ったりすることはないからね。金丸くんとかいい例」

「ああー」


同じクラスの金丸には最初相当嫌われてたし、沢村自身金丸を、アイツ何だよ、とか思っていたが、嫌いだとは思ったことはない。というか、沢村は人を嫌う、ということ自体が元々全くなかった。


今では以前のいざこざなんか嘘のように金丸とつるむようになった。勉強の面倒だって見てもらったり追試逃れたことを一緒に喜んだりしてもらっている。
また、他1年連中とも同様だ。今こうして皆に認めてもらえたのは沢村の性格の故もあるだろう。


「……でもちょっと羨ましいかな」

「へ?」


春市は苦笑した。


「口喧嘩だよ。降谷くんと栄純くんがしてるの、鬱陶しいけど楽しそうだし」

「春っち……」


毒に隠された春市の本音。
それを聞いた沢村は、よーし、とと意気込んで。
春市をキッと睨んだ。


「――春っちのばーか!」


突然のばか呼ばわり。
それに春市は一瞬きょとんとして――クスッと笑った。


「栄純くんはもっとばーか」

「あ。言ったなー!」

「だって本当のことじゃん」

「じゃ、じゃあ春っちの毒吐き屋!」

「嬉しいよ。それ褒め言葉」

「え、嘘!」

「嘘だよ」

「あ、騙したなー!」


あはは。うふふ。
引っ切りなしに笑い声の漏れる和やかなそれは最早まったく口喧嘩とはいえない。


いやむしろ。
これは、その、なんというか。


「うーん、駄目だー。春っちには俺ムカつけねー」

「俺も。やっぱり栄純くんとは今のままで十分楽しいや」

「春っち……」

「だって栄純くんのボケさばけるの俺しかいないしね」

「え、そんな理由……?」

「冗談だよ」

「ぬあ!また騙されたー!」


あはは。うふふ。あはは。
二人の背景は汗くさい球児に似合わぬピンクのお花畑。
ふわわんと、なまぬるーい空気が辺りを満たす。






――そんな、なんというかアレな空気の斜め隣のテーブルにて。


「……もしもし御幸くんや」

「なんだい倉持くんや」

「青道はいつから女子高になったのかね」

「はっはっはっ、知らねーですわ」








さわむらくんとはるいちくん












*ふるやくんがなかまにいれてほしそうにふたりをみている!
なかまにいれてあげますか? →はい/いいえ



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