詳しく、な 「――おうおう沢村よぉ、純さんと哲さんが訊いてんだ。詳しく聞かせてもらえるよなぁ?」 クククとどこぞの悪代官のごとき笑みを浮かべ、じわり、と沢村に迫る倉持。 「い、今っスか?」と沢村が言うと「ったりめぇだ!」と少女漫画を中断した伊佐敷が怒鳴る。 「う、でも俺将棋……」 「俺のことは気にするな」 盤を睨みながら結城は頷く。例のごとく長考に入っているのだが、耳だけ参加する気のようだ。 沢村はうぅ〜と周りに助けを求めた。だが、倉持と同時にゲームを中断した中田や伊佐敷のマッサージ中の降谷は目を逸らす。むしろその2人も聞き耳を立てる気満々。 裏切り者め。沢村は音にならないように呟いた。 ――さて、ここで今の状況説明。 沢村の幼なじみ・若菜との関係について、詳しく聞きたがった3年2人。 そこで後輩の拷問……もとい、扱いに長けている倉持は一肌脱ぐことになったのである(もちろん倉持自身も相当気になっているが)。 「じゃあまずは軽いジャブ程度に行くか」倉持はニヤリと笑った。 「幼なじみといえばやっぱり王道――毎朝若菜が起こしに来てくれてたんだろ?」 「いや、ないっスよ」 沢村ははっきり答えた。このくらいの質問ならば平気だ。 「あ?テメェ本当だろうな」と威圧的に睨みつけてくる伊佐敷。沢村は「うす」と大きく頷いた。 「アイツ朝弱いんで逆に起こしてまし」 「寝起きの若菜だとぉおお!」 「ちょ、なんスか!?」 いきなり血相を変えた倉持に胸倉を捕まれた沢村。 「パジャマはあれか!ピンクの前ボタンのスタンダードなパジャマか!」 「……胸ポケット付き、な」結城がぼそり。 「い、いやちがっ、アイツはジャージとかスウェットがほとん」 「夢を壊すな馬鹿ちんがぁあ!」 「ぐはっ!?」 ゴッ、と頭突き。 額を抑えた沢村が痛みに悶えていると、伊佐敷が何やらふむふむ頷いている。 「あとは若菜の無防備な寝顔にドキドキして、思わずキスってのが王道だよな」 「それは少女漫画の読みすぎなんだな〜」 「うるせぇ!」 「あべしっ!?」 近くにあった少年マガジンアタック(巻頭グラビアは長澤ちゃん)。顔面に受けた中田は倒れ伏した。 1番近くにあった自分の少女漫画だけは決して投げない。愛である。 「……次」 ぼそっと結城。 倉持はこくりと頷き、質問を変えた。 「――じゃあ幼なじみといったらさらにお約束。お風呂でばったりハプニングなんてまさか済んでねぇだろなぁ?」 「はぁ!?ちょ、そんな漫画みたいなこ、と……」 かち、と沢村が変に固まる。 「……あった、な」 パチ、と金を動かした結城はぼそり。 あ、と沢村は返しにその金を取り、角を指した。 「王手っス」 「ぬ……」 その間に。 倉持は「てんめぇえええ」と沢村の首に腕を巻き付けた。 「どんなだった!なあ、若菜の乳どんなだった!」 「うぐっ!?や、でででも中3のことだし……」 「十分成長済みじゃねぇかぁああああ!」 「倉持、その言い方は下品だ」 「はい!すみません哲さん!」 「素直!?てか俺その時それどころじゃなくてっ」 「はぁあ!?それどころじゃないとは何だ!若菜の乳どころじゃない事態とは何がある!」 「……尻、か」ぼそっ。 「なっ、お前その歳で既に尻にしか目が行かないだとぉおおお!?安産型か!安産型だったのか!」 「ちょ、げほっ、リーダーさっきからなんかぼそぼそとマニアックな……あ、そこじゃ二歩っすよ、けほっ」 「む」 指そうと思っていた歩を戻し、再び長考開始。 一方話を聞いていた伊佐敷は何故か顔を赤らめ、チワワのようにプルプルしていた。 「て、テメェ沢村、まさかそのまま『なあ、俺も、いいか?』と風呂に……」 「へぇ最近の少女漫画って過激」 「黙れ中田ぁ!」 「ひでぶっ!?」 少年チャンピオン(巻頭グラビア以下略)が飛ぶ。 「吐ぁけぇええ!沢村吐くんだジョー!」 「ぐえっ、ち、違うものが……魂的な何かが、ぐえっ」 「沢村、これでどうだ?」 「い、いまはむり、ス……」 「あ、純さん。そういえばこれとこれ、御幸の雑誌なんだな〜」 「知るか!そこに置くのが悪い!」 「うぉおおお俺は乳派だぁあああ!」 「む。沢村、どうした。次だぞ」 「うぅ、だか、ら、今、は………」 「――……あ」 と、その時。 うとうとしていた降谷が初めて口を開いた。 「ジュース、何がいいですか?」 詳しく、な (俺は烏龍茶を頼む) (うす。伊佐敷先輩はファンタで?) (おう。わかってんじゃねぇか) (俺は緑茶なんだな〜) (おい沢村、俺もファンタ……ってあれ?息してな……) *もっちのさけびはおいらのさけび!らぶ、わかな! ……………なんだこのぐだぐだ。 100923 [*前へ][次へ#] |