今日の伊佐敷先輩 OBから届く荷物が“差し入れ”ならば、各部員の実家から届く荷物を“救援物資”と俺たちは呼ぶ。 救援物資は季節によっては衣類だったりするが、所詮は高校生。 それぞれの地元を懐かしめる特産品だったり(食い物の場合ほとんどが上級生に奪われる)成長期の栄養を補うための食料だったり(食い物の場合以下略)がほとんどだ。 まあ、それはいいとして。 「――っしゃあ来た来た来たぁあああ!」 ちょうど近くにいたぎゃんぎゃんうるせぇ1年に命じて小包を部屋まで運ばせた俺は、その1年を追い出して高らかに吠えた。 この2年以上の間、喧嘩してる時以外は必ず3ヶ月に1度きっちり届いてきた姉ちゃんからの救援物資。 そう――姉ちゃんの読み終えた少女漫画の新刊とオススメの詰め合わせだ。 特に今月はいつも以上に楽しみで楽しみで仕方なかった。 何しろ先月はあの名作、『ラブ☆魂』最終巻の発売だったからな! 今日この日のためにコンビニで最終巻を見かけては立ち読みしたいのをぐっと堪え(俺は集中して読みてぇ派だ!)、春に試合を見に来てから姉ちゃんが気にしてた降谷の野郎の隠し撮り写メを送って機嫌を取り、姉ちゃんの友人用の御幸の野郎と哲のを以下同文。 そして今日。 ついに、ついに『ラブ☆魂』最終巻が俺の手に……! 「らっしゃあああ読むぜ読むぜ読むぜぇえええ!待ってろ大泉小谷ぃいいい!」 小包の十数冊の中から『ラブ☆魂』を選びだし、広げて寝そべった。 同室の1、2年は問答無用で追い出させてもらったし、消灯時間まで俺を邪魔する奴は居ない。 さあ、集中しろ俺。そして大泉と小谷の行方をこの目で―― と、いうところで。 ふ、と視線を感じた。 「…………」 恐る恐る振り向く。 全開に開けっ放しになっていたドア――恐らくあの1年が出て行った時にそのままにしたのだろう――の向こう。 呆然と立ちすくんでいたノリと白州と、思い切り目が合った。 「あ……じ、自分ら、何も見てないスから……」 「……失礼します」 「………」 パタン。 ドアを閉めてくれた。 今日の伊佐敷先輩 (沢村ぁあああああああ!?) *すぴっつせんぱいってば、ちょうかわいいなっ。きゅんっ。 実は1日1本目指してる今日の○○シリーズ。 100916 [*前へ][次へ#] |