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I'll always be true, so please love me do!【R*L】(Switch*サナ様/相互記念)
その日、ロキは久々にオーナーに呼び出された。
しかし“扉”をくぐって彼女の元へ向かってみると戦闘の空気にないことはすぐにわかった。
そこが彼女の部屋であることも。


こんな風に呼び出されたことなんて今まで一度もなかったロキが何事か、とオーナー――ルーシィを見れば。
彼女はちょっとはにかむように笑って、唐突に、こんなことを言ってきた。


「ね、今から二人で出掛けない?」





I'll always be true, so please love me do!





「――あー、よかったぁ!」
「………」


数歩前を行くルーシィが嬉しそうに声を上げた。
アーケードの石畳で軽やかにミュールを鳴らし、ミニスカートを翻す。
大好きな人の大好きな声。聞くだけでたまらずへにょにょんとなるその声にも、今のロキは無言かつ無反応。
しかし、そんなロキの様子になんか全く気付かないルーシィは、「もう私どうしようかと思ってたのよねー」と続けて、


「折角の――」


くるりとロキを振り向き、ニコッと飛び切りの笑顔を見せ、


「――トイレットペーパーと箱ティッシュの特売日!」
「………」


かさ張るから一人じゃ持てそうになくてー、なんて、元々荷物なんて持つ気すらないご主人様は、再びロキを先導するように歩き出す。


騙された、と両手いっぱいにそのかさ張る荷物を持たされたロキは思った。
いや、実際ロキは見事に騙されたのだ。


出掛けよう、なんてルーシィが誘うから。
二人で、なんてルーシィが言うから。
てっきり――


「デートだと思ったのに……」


ぼやきを聞き咎めたとばかりにルーシィは、「えー」とさも心外だわと言わんばかりに肩を竦め、華麗なステップで振り向いた。


「私そんなこと言ってないじゃない」
「だって二人でって言ったし」
「他に今日付き合える人居なかったんだもん」
「………そう」


お1人様1点限りだったのよねぇ、やっぱりもう何人か付き合わせるべきだったかなー、なんて。
どこぞの主婦みたいなことをぼやきながらもご機嫌最高潮のルーシィである。


――ああ、何だ。誰でもよかったのか……


胸の内で燻るロキの思いに、ルーシィは全く気付かない。
デートの誘いはいつも断られ、告白は軽くあしらわれ、雰囲気をつくったところでさらりと流され。
なのに今日、急にあんな風に呼び出されて、


――ね、今から二人で出掛けない?


そんなことを言われたのだ。
ロキは一瞬驚いて。
でも次の瞬間には嬉しくてたまらなくなって。
尻尾があったらちぎれんばかりに振ってみせるだろうへにょにょん笑顔全開で、


――うん、もちろん


って、頷いたのに。


「………」


結局、ただの荷物持ち。
星霊とか男とか。そんなの関係なく、ルーシィにとってロキは都合のいい存在というわけか。
これぞまさに下僕。“下”に“僕”でゲボク――


「……ルーシィ、今日から僕、一人称を“俺”にしようかと思うんだ」
「は?」


何を急にわけわからんことを、という顔をする。
いいんだ、どうせ女王様の下の僕さ。下僕が何を言ったって無駄なのさ。
やけにずっしりと感じる紙製品を抱え直して嘆息すると、


「重い?」


前を歩いていたルーシィが隣まで戻って来た。


「別にそんなことないよ」


男のプライドとしてそう答える。相変わらず顔はぶっすーとしたままで。
実際、細身にも見えるが星霊であるロキにしてみれば、このくらいの重さはなんでもない。だからといって戦闘用のロキを荷物持ちに使おうなんていうオーナーはルーシィくらいだろうが。


「………」


ルーシィがちょっと困ったようにちらちらロキを窺う。何故ロキが不機嫌なのかわからないらしい。
ロキはあえて目に入れないようにした。隣から可愛いすぎてたまらないオーラが出てても無視。
見た瞬間うわわごめんルーシィ僕が悪かったーってなる自信がある(惚れた弱みってやつだ)。


「――あのね」


ルーシィはちょっとだけ身体を傾け、ロキの顔を下から覗き込むようにした。
「私、ロキに付き合ってもらえて本当に助かったし、嬉しかったよ」と続け、


「――ありがとう、ロキ」


ふわりと柔らかく笑った。


「………」


あーあずるいなぁとうっかり直視してしまったロキは思った。
思いながら、苦笑。
そんなに可愛く言われたら、もう全部許すしか――


「――やっぱり詐欺だ」
「え?」


ないとは言わせない。


「これはどう考えても不当な扱いだ」
「ええ?どこが?」
「僕は荷物持ちのための星霊じゃない。君の星霊として文句を言わせてもらう」
「な、何よもう。じゃあどうすればいいのよっ」


ぷぅ、とルーシィが頬を膨らませる。うわあ超可愛いとか思ったのは一瞬。
ロキは、ふ、と近くを歩いていた男女を目で追った。


「――手」
「手?」
「ルーシィの手が欲しいな」
「え……」


ロキの視線を辿り、その男女の手――仲睦まじく繋がれた手を見て、ルーシィは頬を染めた。


「で、でもアンタ荷物が……ってあら?」
「星霊界に置いてきたよ」
「早っ!」


今や何も邪魔するものがなくなった手を見せるロキに、エルザの換装並じゃないの、と顔を引き攣らせるルーシィ。
このくらい、ルーシィの隙を見ては人間界と星霊界を行ったり来たりしているロキには容易いことだ。


「ほら、これならいいよね?」


ロキはへにょにょんと笑いながら左手を差し出した。
一瞬その大きな手に視線を移したルーシィは、再びちらっとロキを上目で見て、


「……今日、だけだよ?」
「うん」


頷けば、ルーシィはまた顔を赤くした。
そして、ロキの左手にルーシィの右手が躊躇いがちに、でも口元だけは素直に綻ばせながら、重なろうとして。


触れる、直前。
さっと下から掬うように掠った。


「へっ?」


そのまま、ちゅっ、と手の甲にキス。
「ななな何してっ」と引こうとした指を自分のそれで強引に絡め取って。
再び、口元に運ぶ。


「ここここら!ば、ばかっ……やっ……」


音を立てたのは最初だけ。
唇を這わせるような、優しく愛撫するような、柔らかなキスを落としていく。


「っ……」


ロキの唇が触れる度に、ぴく、と白い指が震えるように跳ねた。
少し目を細めて、ロキは行為を繰り返す。
ルーシィの潤んだ目を見ながら、じっくりと。


自分が今何をされているのかを理解させるように、見せ付けながら。
唇で、形のいい爪の先まで味わって。


「――ん。ごちそうさま」


なんて。
大変満足げにへにょにょんと笑い、されるがままになっていたその手を解放した。


「〜〜〜っ」


途端にルーシィは膝から崩れ落ちそうになる。何となく予感していたロキはその腕を引いて抱き留めた。
それは不可抗力だったにも関わらず、抱きしめられたルーシィは一層かあああっと赤くなってとロキを全力で突き飛ばした。


「ななな何すんのよ!」
「? 何って?」
「て、手を繋ぐんじゃなかったのっ!?」
「繋ぎたかったのはルーシィじゃないの?」
「はぁっ!?」
「だって僕は手が欲しいって言ったじゃないか」


繋ぐなんて一言も言ってないよー?と、かわいこぶるかのように小首を傾ぐ。


「だっ……だからって、き、キスしていいなんて」
「僕、しないなんて言ってないし」


あくまでもにこやかに、飄々と。悪気一つ見せることもなく。
犬のように従順でありますよ、な顔をロキはしてみせたのである。
すっかりしてやられたルーシィは「う〜」と唸って。


「し、仕返し?」
「何のこと?」
「……ぅ……」


知らないふりをすれば、ルーシィはくしゃりと顔を歪めて俯いてしまった。
やり過ぎたかな、とロキは笑みを苦いものに変えた。
困った。泣かせるつもりはなかったんだけど。


「ルーシィ、ごめん。やり過ぎた」


しかし泣きそうな顔もまた可愛いなぁなんて不謹慎なこと考えながら、慰めようと手を頭に伸ばして。


その手が。


「え……?」


はし、と掴まれた。
そのまま、するり、と滑るように指が絡められる。恋人が、するみたいに。
困惑するロキが「ルーシィ?」と伏せた顔を覗き込もうとしたら。
フフフフと引き攣るような笑い声。


「ててててて手は、繋いだわよ〜!」
「へ?」
「だから、手を繋いだの!でもって、こここれは私がしたいからしたのよ!悪い!?文句ある!?」
「わ、悪くないけど……」


顔を上げたルーシィの妙な迫力に圧されロキはたじろいだ。
頑張って笑ってみせてるくせに、ルーシィは毛を逆立てる猫のようにロキを威圧しながら、ぎゅーっと手をにぎりしめる。
正直ちょっと痛くてやっぱりまだ怒ってるじゃーんとか思ったが。


「――ルーシィがしたいようにすればいいと思うよ」


苦笑しながらそう言って、震える手を握り返した。
本当にこうしたいのは、ルーシィよりもロキのほうだったのだ。
すると少し気を鎮めたルーシィは、


「じゃ、じゃあロキは?」
「へ?」
「ロキは、何がしたいの?」


どことなく必死な顔で尋ねてくる。
成程、漸く自分のロキにした酷いことに気が付いたらしい。
そして気が付いた途端、本当にどうしようもなく甘くなれるのだ、ルーシィは。


「じゃあ――」


だからこそロキは、遠慮なく、思い切り。
へにょにょん、と笑った。


「――デート、したいな」








「あの店洗剤が大特価なのよねー。買って行きましょ」
「あ、あれ?デートは?」
「え?してるじゃない。あ、防虫剤もやっすーい。買わなくちゃ!」
「………」




………主婦?










* * *
デートって何ぞな→買い物→ルーシィは節約魔→特売日→トイレットペーパー→かさばる→荷物持ち
みたいなのからうまれたお話。つかデート関係なくないでしょうか?途中野獣スイッチ入ったロキが書きたかったんじゃないでしょうか?とかビクビクしながら更新します。
サイト開設される前からたくさんのコメントで支えて下さいましたサナ様に愛を込めて書かせていただきました。
サナ様、遅くなりましたが相互ありがとうございました!これからもよろしくお願いします!

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あきゅろす。
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