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明日から使える!ミラさんの魔法講座〜特別篇〜(ちこ様リクエスト)
*SSのClap?NGをお読みになってからどうぞ。








「いいかいナツ。ルーシィに会ったら『どうしてロキの人差し指と中指の爪は綺麗なの?』だよ」
「おう!」
「あとロキのビーストモード解禁もおねだりだからね」
「おう!」
「よーし!訊くときのポイントはその天然色の笑顔だよナツ!」
「? ……おう!」





明日から使える!ミラさんの魔法講座〜特別篇〜





「――ルーシィルーシィルーシィ!なんでロキの人差し指と中指の爪は短いんだっ?」


たたたたたーっと駆け寄って来たナツは唐突にそんなことを訊いてきた。ルーシィの隣に座るが速いか、まるで子供みたいに好奇心で目を爛々に輝かせて、早く質問に答えて!なオーラ。


来たぁああああとそれまでカウンターでミラジェーンから妙なレクチャーを受けていたルーシィは思った。
かれこれいろいろあって、ロキからバトンされてきた問い。だが残念なことに花も恥じらう乙女ルーシィは、正直な話、この質問の明確な解答は知らないのだ。
だが、ロキやミラジェーンの反応でなんとなーく想像はできてしまった。


要は、使うのだ。
ナニ……かに。


「うぅ……」


カウンターを挟んだミラジェーンに助けを求めれば、バチコーンとウインク飛ばして親指を立て、さあやっちゃえルーシィ☆の合図。
あああああ頼りにならないぃいいい。
ルーシィはあぐあぐと喘いだ。


だからって、たった今習ったばかりの“裏必殺・ここで照れたら相手の思う壷……だからこそあえて質問にハッキリ答えてほとばしる『ハッ?だからどーした。その程度の下ネタで私がどうかなるとでも思ったか。出直してこいこの豚野郎』オーラ”の術〜なんて高度(?)な真似、ルーシィにできるわけもない。
結局、


「わ、私そんなの知らないっ」


ルーシィはかああっと赤くなってそっぽを向いた。
これぞロキの思う壷だとは思ったが、乙女としてどうしても耐えられなかったのだ。


「えー、嘘だ。ロキはルーシィにきけって言ったぞ?」
「知らない!」
「でも」
「知らないったら知らないのっ!」


ルーシィは怒鳴ってカウンターに拳を落とした。これ以上しつこくしたら殴るわよ、の意思表示。
そのままざっと視線だけでロキの姿を捜す。しかしどこにもその姿は見えない。


きっと今頃どこか安全な場所から様子を眺めているのだろう、とルーシィは考えた。
そして真っ赤になってあたふたする超スーパーマジ可愛いご主人様の姿を覗き見てわふわふしているのだあの卑劣な駄目犬め見つけたら絶対ねちねち締め上げてやるのにっ。


ちちちちちっと高速で舌打ちしながら、蛇のように辺りを睨め回していると、「ま、いいや。それはあとでまたロキにきくから」とナツはわりとあっさり諦めてくれた。
そして、


「で、ロキのビーストモードはいつ解禁するんだ?」
「び……?」
「だからビーストモードだよ。俺見てぇなぁてか見せろ」


新たな質問をぶつけてナツはルーシィのほうに身を乗り出した。どうやらこっちが本題らしく目の輝きと鼻息は3割増しだ。
一瞬“獅子宮レオ”としての魔法とかそういうことかと思ったルーシィだったが。
いや、違うわね。このノリできたということはつまり――


「な、何の話?私にはわかんないなぁ」
「だからビーストモードだって」
「えぇ?それどんなことするの?ナツ教えてよ」
「はぁ?俺にきくなよ見たことねーのに。つか見せろ」
「くっ……」


助けを求めてミラジェーンを見る。“必殺・反応見たさに下ネタをふったけど意味を理解できなかった純真無垢な私にせがまれて一から説明してたらそのうちに恥ずかしくなって……でも実は意味を知っている私は天然を装ってその反応を逆に楽しんでやる”、の術〜をやったつもりだったのだ。
ミラジェーンはどこからともなくホワイトボードを取り出し、ラウンドガールよろしく煌めく笑顔でそれを掲げた。


『天然にその技は効かないわよ☆』


ええええええ全然“必殺”じゃないじゃぁあああああああん。
ルーシィは愕然とした。


「ルーシィ、俺ビーストモード見てぇ」
「えぇ?」
「解禁しろよなあなあなあなあ」
「え、えと……」
「なあなあなあなあなあなあ」


どこまでも純粋な好奇心でもって無邪気に「なあなあ」おねだりでルーシィを攻め立てるナツ。
それはまるで、『赤ちゃんはどこから来るの?』と息子に尋ねられた母親の状況。『コウノトリが運んでくるのようふふ』もしくは『橋の下で拾ったのよあはは』みたいなお約束でごまかすべきか、それとも『かれこれこーしてあーしてできちゃうんだぞでへへ』と早めの性教育といくべきか。
まさにそんな複雑な母親的窮地に立たされた心地のルーシィは、


「――わ……たしっ……」
「なあなあな……?」
「わかっ、わかん、ないよぉ……」


ふにゃ、と顔を歪めた。
ぎょっとするナツ。
ルーシィはそのまま手で顔を覆って背を丸めた。


「る、ルーシィ?」
「わか、んないって……、言った、のにぃ……」
「え、あの、俺……」


小刻みに肩を震わせ、時折、ひっ、としゃくりを上げるルーシィ。
それは見るもの全ての憐憫を誘い、庇護欲を煽るような、そんな泣き方だった。
自分が原因となってしまったことに気付いたナツがオロオロとしながら、でもこのまま泣かせているわけにもいかず、とりあえず宥めるように華奢な背中を撫でようとして――


「――ルーシィ!」
「ふげっ!」


どーん、と横から突き飛ばされた。
ずべっと椅子から床に転げ落ちたナツは「ろ、ロキ?」と目を丸くする。
それはそうだろう。ナツにルーシィを泣かせるような質問――まあ詳しい原因はわからないのだが――させた本人のお前は今までどこに居たんだって話だ。
ロキはルーシィの肩を抱くと、フェミニストスマイル全開で優しい声を出した。


「ルーシィ、ナツに嫌なことされたみたいだね」
「い、いや俺ロキに言われた通り……」
「でももう泣かないでルーシィ。僕がいるか――ら?」


がし、とネクタイが掴まれていることにロキは気がついた。


「――……つぅかまえたぁ〜」
「へ?」


にたぁ、と幼児が見たら一生モノのトラウマを刻み込むような壮絶な笑みを浮かべながらルーシィは顔を上げた。
もちろん、涙?はっ、何ですかそれ飾りじゃないんですか、みたいに乾いた目で。
ロキは顔を引き攣らせた。


「う、嘘泣き?」
「嘘じゃないわよ。私の心はさっきから痛くて恥ずかしくて泣きまくりなんだからこの駄目犬」
「いや、僕獅子だから犬じゃ……」
「あらやだご主人様に口答えかしらこの●●犬」
「ルーシィの口から●●!?な、なんか興奮す」
「はいはいもうお黙りなさいねこの●●●●犬」
「ぐぇっ」


ぐい、とネクタイを引っ張り、ロキを引きずるように歩き始めた。
どこへ行くのかなんて決まってる。
まずは、そう、二人きりになれる場所だ。


完全に据わったルーシィの目。ただならぬ雰囲気に、ナツが床を這うようにして道をあけてしまった。
しかしまだ諦めきれないナツは、死を覚悟した捕虜のごとき目をして胸の前で小さく聖印をきるロキをこっそり追う。


「ロ、ロキロキロキ、もしかしてこのあとビーストモードか?」
「えー?うーん。ルーシィがビーストモードかもー?」
「マジ!?ルーシィもビーストモードになれたのか!?スゲー!」
「ナツ、しーっ、しーっ!」
「スゲースゲースゲースゲースゲー」
「……あン、もうナツってばぁ」


ルーシィは足を止めた。
そのまま、ゆっくり、子供みたいに「スゲースゲー」を繰り返すナツを振り向いて、


「――ちょっと黙れ?」


小首を傾いでニコッ。
たまらなく愛くるしいはずのその笑顔で、


『……あい……』


ナツとさらにロキまでもがカクカク頷いたのだった。









――そして一人残されたカウンターで。


「……流石ねルーシィ。“最終奥義・とりあえず困った時は女の涙しかないわねハッハーンみたいに使った結果なんやかんやで現れた真犯人をねちねち締め上げて『あーれー女王様お許し下さいー』『げへへ、よいではないかー』でとどめはニコッ”の術――まさかあの幻の魔法にこんなところで会えるなんて……」


ミラジェーンは、ふ、と満足げに微笑んだ。


「……もう、私に教えることは何にもないわ」


立派に成長した弟子の姿を少し淋しげに、しかしどこか誇らしそうに見送るミラジェーンだった。






「って何も教わってませんてば!」


耳聡いルーシィがツッコんで、終幕。












* * *
ちこさんよりリクエストを頂いた時、どないすればいいか結構考えた。まさかあのNGの続きだとおおお。ちなみにFTで初めて書いたのがアレでした。わーいなんて残念なんだ私。
でもやっぱりこういうCPのないものは楽しいですね。好き放題できますとも。やりたい放題やった結果がこれですとも。
で、FT初伏せ字使っちゃった。●●や●●●●は想像してください。答えが知りたい方は……まあ、居ないだろうけど。
それではちこさん、やりたい放題できるリクエストありがとうございました!

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あきゅろす。
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