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コンチェルト・グロッソで歌え【N*L*G】(ミケ様リクエスト)
毎日のようにギルドを出て。
毎日のようにプルーと毎日の道を歩き。
毎日のように水路のおじさんに声を掛けられ。
毎日のように帰宅したルーシィを。


「よぉ、毎日遅いなルーシィ」
「毎日女の独り歩きはよくねぇぞ?」
「あい」


毎日のような顔して出迎えたその2人+1匹に。


「………」


ルーシィは毎日のように、ではないが飛び込んで。


「私の毎日に入ってくるなぁあああああああああっ!?」



――膝を叩き込んだ。





コンチェルト・グロッソで歌え





「あん、た、らぁっ……」


さすがに3連続の全力カウ・ロイ――首掴んで顔面に膝をバキッ!てやつですBY青い猫――は肉体派ではないルーシィには辛い。
ぜーぜー言いながら、それでも不法侵入者たちをキッと睨み続け、ねちっこい説教の準備をしていたら。


「ほーら言っただろ?」


とルーシィよりもはやく復活をとげたナツが椅子に座り直し、誇らしげに胸を反らす。


「今日はぜってぇ膝だって」
「くっそー」同じく復活したグレイ。「3人だから回し蹴り一発で決めてくれるかと思ったんだがなー」
「あい、オイラなんてちゃんとカウ・ロイまで予想したんだよ!すごいでしょ!」
「ああ、すげーよハッピー!俺真空跳び膝のほうかと思ってたのに」
「ホントよくわかったよな、そこまで」
「えっへん!」
「じゃあ1番遠かったグレイが明日ハッピーに魚なー」
「チッ、しゃあねぇ!わーったよ!」
「うぱー!」


なんてやり取りに。


「人のツッコミで賭けてんじゃないわよ!?」


予定を変更したルーシィは怒鳴り付ける。
ってゆーかなんで猫に技とかまで読まれてんの私!とちょっといろいろ恐ろしくもなった。
ふと、ナツは急に思い出したかのように、


「あ、ルーシィ、今日俺泊まるからな」


なんて言い出した。


「はぁ!?あんたマジ?」
「おう、マジマジ。こんな時間に帰るの面倒だし」
「ふざけないでよ!お、おと、男だけを泊めるなんて……」
「安心しろルーシィ」とグレイが割り込む。「俺も泊まる。ナツだけじゃ危険だからな」
「……半裸の変態にどう安心しろと?」
「はっ!?」


ジトリ、とルーシィの冷たい視線に曝されたグレイは慌てて脱ぎ散らかしたシャツを着込む。
はあ〜、とルーシィは嘆息した。


突然不法侵入し、突然泊まるとかほざく獣と変態。
突然降り懸かった悲劇に「なんで今日はエルザ居ないのぉ〜」と頼りになる風紀委員不在を嘆くルーシィに。


「まあまあルーシィ、オイラたちがいるから大丈夫だよ」
「プーン」


ハッピーとプルーがルーシィの足を肉球でぱふぱふと叩く。


「あーそうねー、アンタたちのほうがよっぽど安心するわー」


ルーシィは1匹と1体を抱きあげて愛おしげに頬擦り。プルーはともかくハッピーまで「あい〜」とされるがままだ。
あまりの扱いの差に、服を着たグレイはチッと舌打ち。ナツもムゥと顔をしかめる。だがあえては何も言わなかった。


「……じゃあ、わかったわ。泊めてあげる」


とルーシィは言って1匹と1体を一旦下に降ろし。
「ただし」と加えてビシッと2人の危険人物を人差し指で指す。


「この私に迷惑かけた瞬間窓から捨てるからね。わかった?」
「鬼だな」「悪魔です」「女王様だろ」「ププン」
「やかましい!」


余計な茶々をいれるナツハッピーグレイトリオ(プルーは何言ってるかわからないので削除)にがうっと吠えるルーシィ。
それから「わかったら返事!」という号令に、『あーい』「プーン」と何故かプルーからも返事が返る。
鬼で悪魔で女王様でププンなルーシィは満足げに頷いた。


「ん、よし。じゃあ私お風呂入るから大人しくしてなさいね。行こ、プルー」
「ププーン」


といつものように連れ立って風呂に向かえば。


「オイラも入るー!」


ハッピーがルーシィに向かって飛んできた。


「あれ?ナツと入らないの?」
「オイラ今日はルーシィと入りたい気分です」
「そ?じゃあ」


おいで、と言おうとしたルーシィに。


「いや駄目だろ」
「あい?」


喜んでルーシィに着いて行こうとしたハッピーの首根っこを掴み、猫のようにぶら下げたグレイの妙に厳しい声がとぶ。
「? なんでよ」と怪訝な顔をするルーシィに。


「ハッピーとだなんて、年頃の娘がはしたねぇ」
「……年頃の娘の部屋に不法侵入して泊まろうっていう変態が何を言う」
「うっ」もっともなご意見。
「だいたい何がはしたないのよ」
「何って……ハッピーはオスだぞ?」
「プルーも男の子よ」
「プーン」
「オスだったのか………い、いや、それでも駄目なもんは駄目だ」


プルーみたいな種類も性別も謎の生物(一応“犬”で“オス”で“星霊”らしいが)ならまだしも、ハッピーはどう見てもオスで。
つまり、男で。
ルーシィの肌をそんな簡単に他の男に見せたくない。
そう思うことがいけないのだろうか。グレイはハッピーを捕まえたまま強く「とにかく駄目だ」を繰り返す。
するとルーシィは唇を尖らせ、


「はぁ?なんかグレイ過保護なお父さんみたーい」
「かっ……!」


それは頭にズドンとくる衝撃だった。
お兄ちゃん、とかならまだしも、過保護なお父さん。
流石にそれはいろいろキツいものがある。


「――わかったルーシィ」


それまで黙って腕を組んで座っていたナツが席を立ち上がる。


「ここは俺も一緒入ることにぶらっ!?」


途中でハッピーがナツの顔面に飛び込んできた。
ハッピーの自発的なものではない。もちろん投げられたのだ。グレイに。


「な、なにすんだグレイ!」
「うるせぇ!この発情期火竜!」
「んだとこの過保護親父!」
「あ゙あ゛!?やんのかこの……!」
「――やめなさいね?」


静かなルーシィの声音。
怒声でも懇願でもなんでもないそれは、しかし、たった一言でナツやグレイを止める、抗えない力となった。
急に、しん、と静まり返る室内で。
取っ組み合う寸前で固まるナツとグレイをほぼ無表情に近い冷たい微笑で見下ろし、


「ハッピー、入るよー」
「あ、あい……」


ふらふらと飛んでく青い猫。
馬鹿2人を冷ややかに切り捨てたルーシィは、1体と1匹を連れて風呂場に消えた。






風呂から上がり、何故か珍しく反省の色を見せる――ちょっと怯えていたのがルーシィには不思議だった――汗くさい二人を順番に風呂に入れ。
しばらく談笑して、そろそろ寝ようか、という話になって。


「んじゃ、あんたら床ね。布団なくても風邪ひかないでしょどーせ」


ルーシィはベッドの縁に腰掛けて脚を組む。
ナツはグレイに顔を寄せた。


「つかルーシィ今日は本当に扱いひでぇよな」
「ああ、女王様だな」
「鞭持たすか」
「いや洒落になんねぇだろそれ」
「……聞こえてるわよそこの馬鹿2匹」


ひそひそやってるつもりの2匹(もはや人扱いではない)を睨むと「プーン」とプルーがルーシィの足元にやってきた。
それに気付いたルーシィは、いつものようにプルーを膝に抱き上げる。


「プルー、今日も来てくれてありがとうね」
「プーン」


プルーは星霊で、人間界には長く居られないため、いつも寝る前には帰ってもらうのだ。
星霊を見つめるとき、ルーシィはいつもとちがう顔になる。母性を感じさせるような優しい表情。
普段見せないそれに、ナツとグレイは一瞬見惚れてしまう。
そして。


「おやすみ」


ちゅ、とルーシィはプルーの額にキス。


「明日もよろしくね」
「ププーン」


そして子犬座を閉門。
した瞬間。


「……何よ」


妙な視線を感じたルーシィがナツとグレイを振り向けば。
何やらそわそわとするナツとグレイ。


「い、いやー、おやすみのキスか……」
「い、意外と乙女だな」
「な、何よ……悪いっていうの?」
「悪くはないけど、な?グレイ」
「ああ、悪くはねえなぁ、ナツ」


妙に顔を赤くしながらあはははと笑い合う2人。
気持ち悪っと呟き、からかわれた気分になったルーシィがベッドに足を差し入れると。


「ルーシィ、オイラも一緒に」
「おーっとハッピーは、こっちだよなー?」


ナツがルーシィに飛び込み掛けたハッピーの頭をがしっと掴む。
グレイも「ああ、男は男同士仲良くだもんなー?」と大きく頷いた。


「……あい?」


野性の勘的な何かでハッピーは言葉をとめて、脂汗を流す。
殺気に近いそれ。ハッピーはふるふると身を震わせた。


「もー、ハッピー怯えてるじゃないの。弱いものいじめはよくないわよ」
「あい。ルーシィは今日容赦なく膝を叩き込んだけどね」
「黙れネコ」


あれはツッコミよ、とルーシィ。自分のツッコミが度を越していることに気付かないあたり、フェアリーテイルの魔導士であるといえるかもしれない。
ハッピーは「あい……」と少し迷ったようにルーシィとナツの間で視線を行き来させ。
結局。


「……オイラ、ナツたちと寝ます」
「そう?」
「よーし、よく言ったハッピー。それでこそ漢だ」


とナツが手を離した瞬間。
ハッピーはふらふらとルーシィのほうへ飛び。


「じゃあ……ルーシィおやすみ」


ちゅ、とルーシィの額にハッピーから可愛いキス。
いつも生意気なハッピーの珍しい甘えっぷりにちょっと照れながら「はいはいおやすみ」とルーシィが微笑むと。


「は?ちょっ……」


右にナツ、左にグレイがどっかりと座る。
あんたら何して、と言う前に。
肩に手が置かれた。


左右ほぼ同時に。
頬に、唇が触れる。


「はは、おやすみ」


照れたように笑ってナツが言い。


「……おやすみ」


優しく囁くようにグレイが言う。
固まるルーシィの身体に、肩にナツ、腰にグレイの腕が絡まり、ルーシィをベッドにそっと倒し。
あっという間に3人で同じベッドにおさまってしまう。


「…………」


ハッピーも「ずるい!」とルーシィの胸の上に飛んだ。


「………………」


右にナツ、左にグレイ、上にハッピー。
その状況に、はっと我に返ったルーシィは。


「ね……寝れるかぁああああああ!?」


瞬時にタウロスを呼び出して。
2人と1匹を窓から捨てさせたのだった。









* * *
や り す ぎ た。
もう、なんかいろいろ大丈夫でしょうか。カウ・ロイ周辺意外、私真面目に書いてない気がする。頭ぱーんな気がする。
でも久しぶりにおばかっぽい話で楽しかったです。こーゆーの、もっとやりたいんスよ。本当は。ばかなんすよ、本当は。
リクエスト下さったミケ様、久しぶりに楽しい妄想させてくださってありがとうございました!

*ミケ様のみお持ち帰り可能です

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