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I love you はもう信じない【R*L】(W-day)


「はい、これルーシィに」


突然ギルドに現れたロキはルーシィに何かを差し出した。


「……何それ」


一人でジュースを飲んでいたルーシィはきょとんとする。
手を出すことも忘れて、ロキの指先に摘まれるその袋を見た。
ルーシィの手の平より一回り小さいくらいのサイズだろうか。小さいながらもちゃんとラッピングされているそれを差し出しながら、ロキはへにょにょんと笑った。


「クッキーだよ」
「は?なんで?」
「ホワイトデーだからね、お返し」
「………あ」
「ほら、ルーシィくれたろ?バレンタインに」
「……な、何のことかしら?」


ルーシィはあさっての方を向いた。
確かにバレンタインとか言う日にチョコレートをジャケットの内ポケットに入れはした。


でも、あのチョコレートは気まぐれだ。
深い意味なんてないし、お返しを貰うほどのものでもないのだとルーシィは思っている。


「いや、だからチョ」
「知らない」
「だけど」
「覚えてない」
「でもそんな」
「記憶にない」


ばっさり。


ルーシィはロキの追求すら許さないくらい容赦なく言い切る。


もしここでルーシィがあの10Jチョコレートを認めたら、絶対調子に乗るのだこの星霊は。
そんなの困る。
あんなのはほんの気まぐれだというのに。
意味なんて、ないというのに。


「そっか……」ロキは呟いた。「じゃあ内ポケットのあれはなんだったのかな」
「気のせいよ」
「木の精?」
「気のせいよ」
「え?木の?」
「………」


うわまた遊ばれたー、とルーシィは一瞬顔を引き攣らせ、しかし涼しい顔のフリをする。
もうそんなもの私には関係ないわ、とばかりにロキから顔を背けてストローからジュースを啜った。


「――……わかった」


ロキは苦笑した。


「じゃあこれは捨てるね」


言って、ずっとルーシィに受け取ってもらうのを待っていたそれを引いた。


「捨てるって……別にそこまですることないんじゃないの?」
「ルーシィのために用意したものだから、他の誰の手にも渡したくないんだ」
「……え」
「ちなみに手作り」
「ま、マジで……?」
「超マジ。だからこんなに少ない」
「あ……そう」


ルーシィはストローを弄んだ。
手作りってアンタ乙女か、とか思いながらも。


意地張って悪かったかな。
あげたことを認めなくても、受け取るくらいしてやればよかったかな。


なんて。
ほんのちょっとだけ、後悔。


そんなふうに悶々としていると。


「ルーシィ」
「え?」


呼ばれて顔を上げれば。
眼前に、ロキの顔。
互いの息が交わるその距離で。
ロキは目を細めた。


「――本当は、くれたよね?」
「え……」
「チョコレート、くれたよね」


真っ直ぐ覗き込む目はいつもと違う鋭く熱っぽいそれ。
声のトーンも甘く、ルーシィの脳髄を揺さぶる。


一体どんな魔法を使われたのだろうか。
カチコチになりながら、ルーシィは思わず頷いてしまった。


「――だよね〜」


途端にへにょにょんといつものように柔らかく笑ったロキは何事もなかったかのようにすっと身を引く。
そして「じゃあ渡したからね」なんて言って、星霊界に消えてしまった。


残されたルーシィの手には何もない。


しかし。


胸に違和感。


「………」


恐る恐る見下ろした胸元。
その谷間に。


「〜〜っ!?」


例のそれがすっぽり収まっていた。






――――I love you はもう信じない





や、やられたっ………!







* * *
前に「あったかい便座に感動して涙」をつけてエリさんの短歌。いや、バレンタインが便器だったから揃えてみたとかそーゆーことじゃないんだうん。
ずっとルーシィの乳の谷間に何か挟んでみたかったんだ。まさかここで使うとは。またやろう。
とりあえず3月に更新できてよかったですな。ハッピーホワイトデー。

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あきゅろす。
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