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束縛するななんて言わせない【G*L】


「はいグレイ、これもお願いね♪」


ルーシィは満面の笑みを浮かべてグレイに紙袋を押し付けた。
「へいへい了解ですよ、姫様」と既に両手いっぱいに荷物を抱えたグレイは、苦笑混じりに新しい荷物を肩に掛ける。


今日、ルーシィは街に買い物に来ていた。荷物持ちにはグレイ。
本当はエルザが付き合ってくれるはずだったのだが、行けなくなかった代わりに、と今朝わざわざグレイをルーシィの家まで引きずって来てくれたのだ。


「でもいいのか?こんなに買い物して」


歩きながら荷物を抱え直したグレイは言った。


「家賃は大丈夫かよ?」
「任せてっ!前回の仕事うまくいったし、今月と来月は余裕で払えちゃうんだから!」
「再来月は?」
「………」
「オイコラ。こっち見ろ」


ちょっと厳しい口調でグレイに言われて。


「……じゃん」
「あ?」


ルーシィはグレイに向き直り、頬を膨らませて上目使いで詰め寄った。


「たまにはいいじゃん、自分にご褒美したって!」
「う……ま、まあ悪いとは言ってないけどな」


何故かひどく目を泳がせてグレイ。ほのかに頬も染まっていたりなんかしたりする。
変なの、とルーシィは思ったが。
「でも」とはにかむように笑った。


「心配してくれてありがとね」
「お、おう」


朝早くから問答無用でエルザに連れてこられたくせに、文句一つ言わず付き合ってくれているグレイにルーシィは感謝している。
少しの小言をくらうのも、グレイにだったらなんとなく嬉しい。
再びルーシィが足取り軽く歩き始めると。


「………」


グレイの手がルーシィの手にのびて――


「あ、次はここだった!」


すかっと空を切る。
「どうしたの?」と首を傾ぐルーシィに、「い、いや……」と顔を赤くしたグレイはルーシィの示した方を見て。


「ってオイ、ここは……」


グレイは凍り付く。
そこは下着屋だった。
色とりどりの下着を付けたマネキンや下着がウインドウに並び。
ピンクを基調とした店構えは、男という存在を固く拒んでいる。


「ほら、入ろうよ」
「い、いやここはちょっと」
「何言ってるの。いつも裸のくせに」
「裸なのと女の下着屋に入るのとでは話が違うだろ!?」
「え、同じだよ。変態だもん」
「誰が変態だ!」
「グレイ」
「指差すな!」


傷つくぞ、と流石に本気で怒り始めたので、ルーシィはからかうのをやめた。


「ちぇー。エルザだったら喜んで付き合ってくれるのにー」
「お前、忘れてるようだがエルザは女だぞ?」
「知ってるわよ」


エルザとなら可愛い下着選びあえたのになぁ、と唇を尖らせれば「俺に選ばせる気か?」とグレイのもっともらしい反論。
それもそうだ。まさかグレイに選ばせるわけにもいかないだろう。


「ま、いっか。最初から冗談だったし」
「オイ」
「じゃあここで待ってて。私買ってくるから」
「ったく、早めに頼むぞ」
「はーい」


――と、元気よく返事をしたものの。
女の買い物は軽ーく20分以上はかかるのが当然なわけで。


「――グレイ、ごめん遅くなっ……」


ルーシィが買った袋を抱えて店を出ると。
グレイが女2人に囲まれていた。
服さえ脱がなければ、顔はいいグレイだ。逆ナンでもされているのだろう。


「………」


その光景にルーシィはなんとなくムッとする。
逆ナンする女も女だが、されるグレイもグレイだ。なんですぐ断らないのだろう。


いつもなら隙あらば脱いでいる服を着たままだからいけないんじゃないだろうか。なんで着てるのよ変態のくせに、なんて理不尽なことも考えてしまう。


だって、そんなこと当然じゃないだろうか。
別に彼氏ってわけじゃないけど。
デートとか、してたわけじゃないけど。


今日のグレイは“ルーシィの”荷物持ちなのに。


「ルーシィ」


グレイに呼ばれて。
ルーシィは自分が立ち尽くしていたことに気が付いた。
ルーシィに気付いた彼女たちは残念そうに散っていく。漸く動けるようになったルーシィは慌ててグレイに駆け寄った。


「遅ぇよ馬鹿」


コツン、と頭を小突かれた。「ごめん」と素直に謝れば、ったく、と優しくグレイは苦笑する。
でもそんな甘い笑顔見せられても、ルーシィはまだもやもやしたままだ。


「……さっきの、何」
「あ?ああ、道訊かれてたんだよ」
「……チッ、アイツら古典的な手をっ」
「ん?何か言ったか?」
「あ、ううん。言ってないよー」


お礼に飯でも〜みたいなこと言われて断るの大変だったぜ、とぶつぶつ言うグレイ。それもこれもルーシィの買い物が長いからだ、という話に及びそうになって。
ルーシィは慌てて「あ、そういえばね」と下着の入った袋を掲げた。


「ジャーン!可愛いの買えたんだよ!」
「……あ、あーそーかい」


とグレイがちょっと顔を赤くするから。


「うへへ、見たいー?」
「み、見ねぇよ」
「なんだ。見せてあげてもよかったのに」
「んなっ」
「あーらごめんなさーい?もう締め切りましたー。もう見せまっせーん」
「お前な……」


からかうなよ、と拗ねた顔をするグレイに、ごめんごめん、と平謝り。
でもこのくらいは許されてもいいはずだ。
今日のグレイは“ルーシィの”なんだから。


「それじゃあ次はね――」
「ま、まだ行くのか?」


流石にグレイは疲れてきたようで、げんなりとする。
ルーシィは当然とばかりにグレイに下着の入った袋を押し付けて。
まだ諦めきれないのかうろうろしてる彼女たちに見せびらかすように、腕を絡めた。


「お茶でもしよっか?」







――――束縛するななんて言わせない








「ってなんで今脱ぐ!?」
「はっ!」


カフェに入ってすぐのことだった。









* * *
前に「ストッキングはいたこともないあやつらに」で佐藤真由美短歌。
超必殺2時間書きグレルー。
グレイはどこまでも口うるさいお兄ちゃん。そしてルーシィには厳しいようであまあまですな。でれでれですな。グレルーは兄妹愛感覚から恋が始まればええんちゃうか?

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あきゅろす。
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