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指一本で口説かないでね【N*L】
「……あのね、ナツ、ずっと言おうと思ってたんだけどね」


というルーシィに、「おう」とナツが頷けば。


「アンタ最近――触りすぎ」
「あ?」


ナツは何言ってんだ?とばかりに首を傾げた。傾げている側から、ルーシィの肩にどっこいしょと腕を乗せる。
ルーシィは深く嘆息し。
その腕をうんこらしょとどけて、


「こ・れ・の・こ・と!」


ナツの二の腕をパチンと叩く。
「ってー」と叩かれて赤くなった部分を摩ったナツは口を尖らせ、ルーシィを睨む。


「んだよ。ただのスキンシップじゃねぇか」
「スキンシップにもほどが……あっ、ほら今!どこ触ってんの!」
「もも肉?」
「肉!?てかここは流石にセクハラ!」


またパチンと手痛く払われてしまう。
とはいえナツには嫌らしい気持ちなんてものはない。それをルーシィもわかっているから怒るだけ怒りながらも、照れたりしないし、本気で嫌がったりはしない。
子供がじゃれついてくるようなものだと割り切っていたのだ。


「もー、最近アンタしつこいから嫌!」


――ついさっきまでは。


「でもルーシィ触ってると楽しいんだぞ?」
「はは……アンタじゃなかったら卑猥だわその発言」
「本当だって。手触りがいいんだ」
「ほう、どんなふうに?」
「すべすべしてて」
「ほうほう」
「むちむちして」
「ん?それは褒めてる?」
「ぷりぷりしてて」
「……例えるなら?」
「よく肉が詰まった新鮮な海老」
「………ねぇ、やっぱりアンタ褒めてないでしょ?」
「あ?なんで褒めなきゃなんねぇんだ?」
「キーッ最低!」


そんなやり取りを「あらあら」とカウンター越しにほほえましげに見ているミラジェーン。
すぐにルーシィは「わーんミラさーん、ナツが私を弄ぶー!」と得意のかわいこぶりっこ全開でミラジェーンに泣き付いた。
にこにこと笑顔のミラジェーンから「もうナツ、ルーシィは女の子なんだから困らせちゃだめよー?」とまるで説得力のない注意を受けたナツはまた首を傾げる、


「は?勝手にルーシィが困ってんだぞ?」
「アンタが困らせるからでしょ!?」
「悪気はねぇ」
「余計悪いわよ!」
「へーへーどーもすんませんー」
「キーッ!」
「まあ、ナツったら、そんな態度はよくないわね」と流石にミラジェーンも窘める。「エルザに怒ってもらおうかしら」
「!!?」


ナツは無意識の内にルーシィの腰に伸びていた手を慌てて引っ込める。思わず赤い髪の鬼を探してキョロキョロと辺りを見回してしまうナツに、「そーよ!次変なトコ触ったらエルザに訴えてやるんだから!」とルーシィは何故か勝ち誇った。


それからルーシィはミラジェーンとのおしゃべりに夢中になってしまった。ナツのことなんか忘れたように。


「………あー」


急に暇になったナツはカウンターに顔を伏せた。
しかし、どうも落ち着かない。ルーシィに触れていないと駄目なのだ。それはこのところずっと。
どうしてもルーシィじゃなきゃ駄目で。


「で、そのときにマスターってばね」
「うんうん」


ふとカウンター席の下でピンクの妖精が揺れているのがナツの目に入った。
ナツは突っ伏したまま左手だけそっとのばし、人差し指を、ルーシィのそれと触れさせる。
指の腹を少し撫でると、ピクッとだけ反応した。
でも、今度はルーシィも何も言わないでミラジェーンとのお喋りを続ける。


「………」


ナツはそのまま人差し指を絡めた。
ルーシィは少し指を震わせて――でもされるがままになる。
中指、薬指、小指。
絡める指を増やして、手の甲が触れた。


「えー、やっぱりマスターの趣味なんじゃないですかー?」
「そんなことないわよ……と思いたい……」


そこで、ナツは下からルーシィを覗き見る。
一瞬目が合って――逸らされた。
でも震える指だけは逆に、強く絡もうとしてきて。


「………」


ナツは指を一度、全部解いた。
名残惜し気に宙を掻くルーシィの指に。


今度は手の平を重ねてやった。
そのまま、しっかり指を絡め直す。
流石に今度こそ払われるかな、とナツが覚悟すると。


「――そ、そうそう、ミラさん!知ってますか?」


ルーシィはミラジェーンに話題を切り出す勢いで。


ナツの手を握り返した。






――――指一本で口説かないでね






「――あら?ルーシィ顔赤いわよ?」
「……へ?ななななんでもないです!」
「ホントだ。赤いぞルーシィ。どうした」
「はぁ!?あああんたがっ〜〜〜!」






* * *
前に「iモードに変えたからって仕事中」を加えて佐藤真由美の短歌。
ナツは無邪気ドSだな。決定。
実はこの話カットしたちょっぴりえっちぃ部分があるので、Novelで近々この話の続きみたいなのやりますね。Rー15!嘘。

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あきゅろす。
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