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わたしが全部悪いみたいだ【G*L】


その日はいつものチームで仕事だった。
久しぶりの仕事に張り切るルーシィ。エルザは別の用事で現地合流ということで、ナツとグレイとの3人で馬車で移動中だったのだが。


「ルーシィ、お尻が痛くなったらいつでも僕の膝に来ていいからね」
「あはは行かなーい……」


引き攣った顔で応えるルーシィ。
何故か今回、ルーシィの隣にはロキ。その星霊は自分の魔力でいきなり出てきたのだ。
結果、ルーシィの対面に座るグレイとその隣のいつものごとく瀕死のナツで、4人乗りの馬車は満員状態。


「遠慮しないで。ルーシィを守るのはほら、僕の仕事だし」
「私の何を守る気……?あ、膝が淋しいなら代わりにグレイでも膝に乗せといたらー?」
「はぁ!?」と指名されたグレイ。
「わかった。ルーシィの命令なら……さあ来いグレ」
「ぜってー嫌だね!」


全力で拒否するグレイを見てルーシィは嘆息し、「あー私が悪かった。むさ苦しいからやめて」と言えば「うん。ルーシィの命令なら〜」と忠犬スマイルであっさり引き下がるロキ。
すると。


「――つーか」とグレイの冷たい舌打ち。「最初から俺を巻き込むな」
「……ご、ごめん」


いつもなら軽いツッコミで済む冗談だったはず。しかし、何やら不機嫌なグレイに、ルーシィは身を縮こませる。
そういえば、昨日までグレイはジュビアと仕事だった。なのにわざわざこっちのチームの仕事にも顔を出してくれた。
もしかして、疲れているのだろうか。だったら静かにしたほうがいいかもしれない。
とか考えていると。


「そっかー。グレイ、今日もしかしてあの日?」
「あ?どの日だよ」
「ロキ!」


絡まないの!とロキの袖を引く。てかあの日なんて来るわけないじゃないの、と真っ赤になって。
するとまたグレイの視線が険しくなった気がして、ルーシィは口を噤んだ。


その時「ね、オイラが行ってあげようか?」とそれまでナツの膝に居た空気を読まない青い猫が言い出し、「そ、そうね。同じ猫科同士仲良くしてて」とルーシィは無理矢理ハッピーをロキの膝に押し付けた。
これで静かになって、グレイも機嫌直すだろうと思ったら。


「ルーシィ、まだ肩が開いてるよ。気分が悪くなったら」
「いーらーなーいー。あ、ナツ」
「やめてやれ頼むから」


なんて珍しくグレイがナツを庇う光景に出会えた。エルザがいたら満足げに微笑むだろう。
グレイは嘆息してロキを睥睨。


「ったく、てめぇは久しぶりに会うなり色ボケ全開だな」


というのを聞いて。
そういえば仕事の関わる時にグレイやナツとロキが会うのは久しぶりだとルーシィは気付いた。
チームの前では自ら出てくることのなかったロキを見てふと思う。
――何故今日は、出て来たのだろうか?


「……ねぇ、ロキ。もしかしてアンタがいつも出てこないのはエルザが怖いからじゃ」
「見てルーシィ、雲がハート型だよ。かわいいね」
「図星!?」
「わかりやすいねロキ」とハッピー。


そんなやり取りにもグレイは加わろうとせず、窓に頬杖を付き、外の景色を見ている。もしかしたら寝てしまったのかもしれない。
しばらくしてハッピーもうとうととしだした。珍しく、車内が静かだったからだろう。
聞こえるのは馬の蹄の男と、車輪の転がる単調な音。
ルーシィは声のトーンを落とし、


「……ロキ、あんたはもう帰りなさい」
「えー」不満げなロキ。
「えー、じゃないのっ。もうすぐエルザと合流よ」
「それじゃ僕は帰るけど」
「よし。思った通りあっさりね」
「ルーシィ、もしお尻痛くなったら」
「喚ばなーい&強制閉門ー」


そうしてロキが星霊界に消える。寝ぼけたハッピーはふらふらと飛び、グレイの膝の上に収まった。
狭い車内はさらに静寂。
するとナツがうぷっと青い顔を被うのが見えた。


「あーもー。ほら、こっちきなさい」


ロキが消えた席にナツを移動させ、身体を横たえ、膝にナツの頭を置く。脂汗が浮かぶ額をハンカチで拭って、いつかのエルザのように髪を撫でてやっていると。


「……何よ」


どうやら起きていたらしいグレイの視線に気付く。


「……いや」
「うらやましい?」
「別に」
「グレイにはまだ私の肩あいてるわよ〜?」


にやー、と笑って冗談を飛ばす。


「………」


グレイは無言。
あ、今日機嫌悪いんだ――とルーシィは思い出し、「ごめん」と口を閉ざそうとしたその時。
グレイがハッピーを抱えて立ち上がる。馬車が揺れて、ナツが膝で「うぷぷっ」としたが、ルーシィはそれどころじゃなかった。
無理矢理、ルーシィの隣――ナツの逆隣にグレイが腰を捩込んだのだ。
そのまま、顔をしかめ、


「狭ぇ」
「あ……当たり前でしょ!?」
「誰かのケツがでけえんじゃねぇの?」
「セクハラ!?」
「俺は誰とか言ってねぇし」
「キーッ!ちょ、ナツコイツやっちゃって!」
「うぉぷっ」
「うぉぷじゃないわよ!ほら!やれ!」
「お、オイオイ、あんま揺らしてやるな……」


がくがくとナツを揺さ振るルーシィを止めに入るグレイ。またもやグレイがナツを庇う珍しい光景その2。
途中から、ルーシィはグレイの調子が戻ったことに気付いていた。気付いて、いつものようにやり合う。
何気ない言葉や、悪戯げな笑顔を向けられるのが嬉しかった。すごく、嬉しかった。


「あー、まあいいや」
「へ?」


嘆息し、こつん、とグレイはルーシィの肩に頭を乗せた。
「ち、ちょっと」と文句を言おうとするルーシィに、「あいてんだろ?肩」とグレイ。
いや、確かにそうは言ったけども。


「ねぇ……端から見たらきっと笑えるわよこの仲良しの図」


膝にナツ、肩にグレイの頭。そのグレイの膝にハッピー。
馬車の片側にぎゅうぎゅうになって、まるで片寄ったお弁当状態。


「あ?笑わせとけ」


耳元3センチの距離でクツクツ笑うグレイ。
なんだか妙に落ち着かなくて、ルーシィは目を泳がせる。


「着いたら起こせよ」
「えー。ずるーい」
「疲れてんだよ」
「………」


そんなこと言われたら文句は言えない。
まったくもう、と苦笑したルーシィは。
ほんの少しだけ頭をグレイのほうに傾けた。








――――わたしが全部悪いみたいだ








「うぷっ」
「わわ、ちょっとナツ、吐くなら降りてから……」
『ぐー』
「グレイ、ハッピー、寝たふりしない!」








* * *
タイトルの前に『謝られれば謝られるほど君じゃなく』をいれて佐藤真由美の短歌。
グレルーは難しい時は難しい。気分がのらない時はとことんのらない。今回?超のらない――と思ってた時にきょん様から爆弾投下。今回の総受け気味な話にピッタリな感じのイラストゲット!おかげで完成しました。神さまはいるんだね……。

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あきゅろす。
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