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無駄だろう?【G*L】↓
*R&Fに更新されている『Knock〜』を読んだ後に読むと更に楽しめると思います。
甘さがとんでもないことになるかもなので(当サイト比)胸焼けに注意して自己責任でお願いします。






グレイが部屋に来た翌日。
約束したケーキ屋に行くにも待ち合わせ場所も何も決めていなかったルーシィは、プルーを胸に抱えてとりあえずいつものギルドに向かった。


しかし、着いてみればなんとなくギルドの仲間が違う目で見ている気がする。
まあそれも仕方ない。
いつも可愛い自信があるルーシィでも、今日はかなり可愛い自信があった。
とはいえ、服や髪型をちょっと変えただけなのだ。


服だってただの白いキャミワンピ(ハートクロイツ)に、ミュールだし。
髪だってキャンサーに巻いてアップにまとめてもらっただけだし。
メイクもちょっと気合い入れただけだし。
ついでにマニキュアも珍しく色付きにしてみただけだし。
アクセもちらほらつけて飾りつけただけだし。


見た目ちょっと変わったかなー?くらいだ。


「………」


………………うん、気合い入れすぎたー。
ルーシィは今更気付いて赤くなる。


たかだか街のケーキ屋行くだけで何だこれ。
何このやっちゃった感。何この浮かれまくり感。何この私の残念感。


とはいえ逃げるわけにもいかない。
グレイはもう目の前に居るのだ。


「グレ……」


一瞬。
昨夜のことが思い出されて気まずくなり――いやいやいや、と頭を振る。
あれは一度忘れよう。あれは流されたってことにして……なんてやっていると。


「――なんだ、今日はずいぶん可愛いな」


待っていてくれたグレイのほうからルーシィに声を掛けさせてしまった。
それも、たまらなく甘い微笑と共に。


「そ……そうかなぁ?」


と、待たせたことの罪悪感も忘れ、思わずルーシィはにへへと照れ笑いを浮かべた。
自分の可愛さはよくわかっていても、言ってもらえるのは嬉しいものだ。
するとグレイはそっと手を伸ばし。


「ああ、可愛いぞ――プルー」
「……………は?」
「プーン」


ルーシィの腕の中のプルーの頭を優しく撫でた。
笑顔の甘ったるさはそのままに。


「え……あれ?プルー?」
「あ?」
「だからほら……私じゃないのかなーって」
「あーはいはいはいはい。ルーシィも可愛いなー」
「ついでみたく言うなぁっ!」


ルーシィは噛み付かんばかりに怒鳴る。
誰のために朝からこんなに頑張ったと思ってるのよ、とか。昨日だってあの後服とか決めるのにどんだけ時間使ったと思ってんのよ、とか。
言わないけれど、そんなことを考えたら怒りで、プルーみたいにプルプル震えてしまう。
グレイは「嘘嘘」と微苦笑し、


「冗談だって」


手を、そ、とルーシィの頭に置いた。


「――可愛いぜ」


ぽんぽん、とルーシィの頭を撫でる。
昨日の夜みたいに、優しく。


「そ、そうでしょうっ?」


当然じゃない私なんだから、という顔をしてルーシィは虚勢を張ってみた。
たった一言で機嫌が直ってしまったなんて。
また、にまにましそうになったなんて。
あんまりにも悔しいから、グレイには知られたくないじゃないか。


「それに、嬉しいしな」
「え?」


それは予想外に付け加えられた反応だ。
きょとりとするルーシィの耳元に。
グレイはそっと唇を寄せ。


「――俺のため、だろ?」
「〜〜〜!?」


吐息まじりの低音に、腰が砕けそうになった。
というか実際砕けたらしい。バランスを崩したルーシィを「っと、あぶねーな」とグレイが支えた。


たくましい腕が腰に回って、ルーシィの身体を抱き寄せる。
思わぬ急接近。
ルーシィの頭は一瞬真っ白になった。


さらにはそのグレイ、「なんだ、ヒール高いのか?」なんて、とんでもない至近距離からルーシィの顔を覗き込んできたりするものだから。


「ち、違うわよ、もう!」


我に返ったルーシィは、思わずプルーの鼻で威嚇するように押し返した。
チクチク刺さる尖端に圧され、ルーシィから手を放しながら「んだよ」と不快げに顔をしかめたグレイだったが。
まあいいか、みたいに嘆息して。


「――では行きますか、姫様」


す、と大きな手を差し出す。


「え……」
「なんだよ、また転びたいのか?」
「あ……えと」
「今度コケても助けねぇぞ」
「う……」


別にヒールが高いわけじゃないんだけどなぁ、とか思いながらも。
その頼りになる手を断るなんてこと、ルーシィにはできそうになかった。


だから


「――うん」


笑顔で頷いて。
ルーシィを待つ大きな手に、そっと自分の手を重ねようと――


したところで。


ここがまだ、ギルドであることに気がついた。
沢山の好奇の目にさらされる、ルーシィとグレイ(とプルー)。
なんていうか、「はいはいご馳走様ですよー」と言わんばかりなその視線たち。


途端に。
ルーシィはかあああっと首まで赤くなってしまった。


――結果。


「ささささあグレイ、行くわよ!」


あと少しで触れそうだった手を気持ちいいくらいスルーして、そのまま頭上に高く掲げて「レッツゴー!」。
「ちょ、オイ」とか言ってくるグレイに「ほら、お店混んじゃうしっ!急ぐ急ぐ!」とルーシィ。
カツカツカツと勇ましくヒールを鳴らしてグレイを先導する。


逃げるように足早に出口に向かい、火照った顔を隠すようにプルーを強く抱きしめながら。
流されるにしてももっと場所を考えよう、とルーシィは決意した。




その後ろで。


小さく嘆息したグレイは、何もない空間を握り締めていた。










――――無駄だろう?




* * *
少女マンガのお約束1
バランス崩れて支えて、ドキッ☆
………この先も後ろから蹴りたくなるようなバカッポーが続きます。お気をつけ下さい。

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