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手がリアルには感じられない【N*L】
*Novelナツルー連載KLMNをお読みになった後で読むと2人の関係性がわかります。
続きモノではございませんが、前に更新されている「ともかく〜」を読んだ後だと数倍楽しめます。
ナツやルーシィの頭がぴよぴよしているので気をつけてお読み下さい。







「――ナツ、ねぇ、ナツ。大丈夫?」
「……う?」


ベンチに座ったナツが目を醒ますと、そこには“相棒”の顔があった。金の前髪がかかった寝不足気味の腫れぼったい目。ギルドに集合した時にからかったら「か、関係ないでしょ!」ってプルーで刺されたのだ。


ああそうだ、確かその後。
列車に乗って――酔ってエルザに“寝かされた”のだ。半強制的に。
そんなことを思い出して、今の状況を考える。どうやら今は列車を降りたらしい。
しかし妙なことにルーシィしか見当たらない。他の仲間の姿がないのだ。


「? ハッピーたちは?」
「先ホテル行ったわよ。アンタが回復するの待ってられないって」
「へぇ……」


それはつまり。
二人きり、ということ。


ルーシィがあの仕事から帰った後、心配して待っていた“仲間”――エルザとかグレイとかハッピーとかハッピーとかハッピーとか主にハッピーとかがずーっとルーシィにくっついていたせいで、“相棒”となったはずのナツはなかなかスキンシップを図れなかった。
二人きりに、全然なれなかった。
だから、


「ル」
「駄目」


ぴしゃり、と遮られた。
ナツが何を言い出すかなんてお見通しだとでもいうように、ルーシィは半眼でジトリと睨みやる。


「――言っとくけど私、アンタのこと嫌いなのよ。“相棒”だからって調子に乗らないで」


また、嫌い、と言われた。
それだけでナツはもう何も言えなくなる。
そうだ。キスを許されたからって調子に乗ってはいけなかったのだ。あんなに泣かせて、あんなに傷つけて。
それでも見捨てずに“相棒”になってくれただけでも有り難いことだというのに。


「だ、だいたいなんでこんな場所で言おうとするのよ……」


「は?」とナツが辺りを見回せば駅前。
当然人がたくさん……というほど都会でもなかったため、まばらには人の目があった。
あ、そういえば……とナツが気付くとみると、


「わ、私、人が居ないところじゃなきゃイヤって言ったもんっ」


なんて、そっぽを向きながら言われて。
その耳が真っ赤だったりなんかして。


「…………」


気がつくとナツはルーシィの手を取っていた。「ちょっと、ナツ!?」なんて静止の声は聞こえないことにする。
駅の裏は林が生い茂って、人影はない。自慢の鼻と勘で本当にそこに誰も居ないことを確認し、更に奥へ連れ込む。
「痛いっ」と言われて加減なんてものをすっかり忘れていたことに気がつくが、もう今更だ。
ルーシィの肩を木に押し付けて、両腕をついて逃げ道を阻む。


「ナ、ツ……?」


怯えるような目。
それすらもう、誘ってるようにしか見えない。


「ちょ……んっ!」


がぶり、と噛み付くように唇を塞いだ。そういえば久しぶりの唇だ。余計なリップクリームを唇で舐め取って、ルーシィの味を捜す。


柔らかい、甘い、とろけそう。
感想が次々浮かんで、でもいいやってなる。どうせこんなのルーシィには伝えやしない。
伝えたいことはもう伝えた。ルーシィはナツの気持ちを知っている。


――じゃあもう俺たちに言葉なんか必要ねぇじゃんかよ、なあ“相棒”。


「ふぁ……」


やがて、薄い唇を甘噛みして開かせて、拙い舌使いでもって歯列を乱暴に犯していく。


しかし、好きだ、なんてホントよく言えたもんだな、とナツは思った。
こんな苦しそうな顔させて。泣きそうな顔させて。
怯えさせて。震えさせて。


でもその顔が煽る、なんてああやべぇホント俺最低。どうりでルーシィに嫌われるわけ――


「――……もぅ、ヤっ!」


突然、ドン、と胸を突き飛ばされる。
数歩よろけて、ナツは呆然となった。


嘘だろ。まだ全然し足りねぇぞ俺。
まだようやく逃げ惑ってた舌を捕まえたばっかりなのに。今から絡めて、いっぱいルーシィの味を感じるところなのに。
ここまで盛り上がらせといて、駄目なのかよ。


とか考えていたら。
ルーシィは身を震わせながら、こんなことを言ってきた。


「わっ、私からも、したい……!」



ずぎゃーん。



みたいな音がした。いや、まったくもって意味なんてわからないけれどずぎゃーん。
うわクソなんだこれ。なんでコイツこんなに可愛いんだ。マジでこれルーシィかルーシィなのかミラかマカオだったらどうしよう匂い、匂いはルーシィだけどああでもチクショウこいつたまんねぇマジ可愛い。


「な、ナツっ?」


そんなことを考えていたナツはぎゅううっと力の限りルーシィを抱きしめてしまって、ルーシィからしてもらえるはずのキスを自ら封じてしまう。


可愛い可愛いヤバイ本当に可愛い。
正直俺今までルーシィちょっとナメてたごめんルーシィマジ最高。


「きゃっ?」


あまりに強く抱きしめたせいか、ルーシィの足がもつれた。支えようとして、一緒に青い匂いのする地面に倒れ込む。
ルーシィの頭だけは腕で抱えて守ることができたことに安堵。そのくらいの理性は残っていたようだ。


ふ、とナツが地面に肘を着いて顔を上げたその眼前。
潤んだ鳶色の瞳。唇に微かに触れる熱い吐息。
青臭い匂いが一瞬で消え、組み敷いたルーシィの甘い汗の匂いだけで意識は満たされてしまう。


「こ、こんなところでするの……?」
「へ?」
「初めて、なのにっ……」
「あ、いや……え?」


勘違いされた?
違う俺別に何かしようってわけじゃなくて……“何か”って何だ。
初めてって、何だ。
何のことだかよくわかんねぇけど今のルーシィの顔ヤバイクる。


そんなことを考えているとは知る由もないルーシィは、大きな目を潤ませ、かたかた小刻みに震えている。
胸の前で指を祈るように組んで、何か訴えるような目でナツを見上げる。


「さ、寒い、のか……?」
「……ん」


頷かれたら急に可哀相に思えてしまう。
確か仕事時に常備してる毛布が……、と荷物を視線で探して、うっかり駅に忘れてきたことを思い出した。
しかしこの状況。取りに戻るのもなんだか勿体なくて躊躇われる。
どうしようか逡巡していると、「だ、だからさ」とルーシィ。


「ナツが温めてくれればいいじゃないっ?」
「へ?」
「あああ“相棒”っ、だもん!それくらいしなさいよ!」
「そっ……」


ぴしゃりと命令。
ナツの返事をきく前に、下から背中に手を回し、ぎゅむぅ、と柔らかな胸を押し付けてくる。
薄い布越しの体温。心臓の音。
それらはいつもより生々しく、リアルに存在感を発している。


「〜〜〜っ」


“何か”なんてわからないくせにその“何か”がしたくてたまらない。
それにはまず服だ。きっとこの服が邪魔なのだ。


ナツは抱き返すふりをしながら、ぴったりと身体を覆っていたキャミソールを手でまさぐる。
もう自分のもののように感じられないその手は、器用にするするとその布を背中側からたくしあげ――


「ひゃんっ?」
「え?」


途中で何かが指にひっかかって、パチンと弾いてしまった。
ルーシィはキャミソールの下にも何か付けていたのだ。
そうだ、下着。ブラジャーとかいうやつを忘れてた。


思わず手を止めれば、「ナツ?」と首を傾ぐルーシィ。
急に我を忘れてがっつきかけた自分が情けなくなった。


「わ、わりぃ。俺こういうの……」


慣れてなくて、と言いかけたナツの唇を。
ちょん、とルーシィの人差し指が封じた。


「――大丈夫」


ルーシィは微笑んだ。


「私、ナツのこと信じてるよ」


あまりに真っ直ぐ過ぎた、信じてる、の言葉にナツは手を止めた。
初めて、罪悪感。
ただ脱がせたかっただけのナツの何を信じると言うのだろう。
服が邪魔で、ルーシィのそのままの体温を感じられないのが嫌で。
それだけのために、こんなことしてるナツの。


すっかりどうしていいかわからず、手を止めたまま目を泳がせていると。
ルーシィの冷たい手がナツの胸板を這う。まるでくすぐるような動きに、思わず、ぴく、と反応してしまう。


心臓の辺りにぴたりとその手を押し当て、やはり動けないナツの心音を確かめるようにして。
ニコッと笑った。


「――嫌い」


突然、ルーシィの手がマフラーを乱暴に引っ張った。


「私、ナツなんか、大っ嫌い」
「っ……」


苦い言葉とは裏腹に、与えられたキスは濃厚で、甘ったるい。
キスをしながら、するするとマフラーは解かれていく。
ナツはそのキスに溺れるように、華奢な身体を抱きしめた。



抱きしめながら、少しずつ。
互いの熱を伝え合うために、余計なものを剥ぎ取り合った。



















「――ってゆーことを今頃考えてるに違いないわ、ナツの奴!」
「プーン……」


ぐぐぐっと拳を利かせたご主人様にプルーはどこかうんざりとしたように鳴いた。







――――手がリアルには思えずにいる









「だいたい何よこのチェリーご都合主義な展開。どこの二流小説家が考えるのかしら?ツッコミ所満載じゃないの。あーもーやだやだやだやだ」
「ププーン」
「ナツもナツよねー、そんなこと考えて悶々するなんてばっかみたーい!いや、私の想像だけどもちろんっ」
「………プーン」
「……………ま、まあ、とりあえずー、虫よけも持って行こうかなー……えへ」











* * *
やっぱりいろいろ頭が残念なのはルーシィやないかーいってオチにしてみた。こんなんナツじゃないって思った方大せいかーい。
とりあえず私一回死んだほうがいいかもごめんなさーい。
前に「もう全部脱いだんだけど触れてくる」をつけて加藤千恵☆

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