[携帯モード] [URL送信]
Cherish+【R*L】


――その下を、見せてはいけない。





Cherish+





「ねぇロキ〜この髪どう?」
「うん。かわいいよ」


なんてやり取りに、背後からルーシィの苛立ちが痛い程刺さってくるのをロキは感じた。つかかかかかかっという謎の音と共に。
とはいえ、先程から――ロキが女の子に囲まれはじめてからその気配はあった。うっかり手を握られた瞬間なんかは妙な寒気すら感じたほどだ。


ずっと気付いてはいたロキだったが、久しぶりに会ったなかなか女の子たちは離してくれそうにない。
こういう時、離れろなどという乱暴な物言いもできず――この辺りは根っからのフェミニスト――、どうしたものかと思っていたら。


「――ロキ」


グレイに呼ばれた。
これを機に、渋る女の子たちに帰ってもらうことにする。笑顔で謝って「またね」と言えば渋りながらもいうことを聞いてくれた。
女の子たちをどかしたグレイはテーブルを挟んだ椅子にどっかりと座り、


「……お前、気付かないのか?」


ロキの少し離れた背後にいるはずのルーシィへ僅かに顎をしゃくる。
ロキは曖昧に微笑んだ。どうやら離れて座っていたグレイにまでルーシィの不機嫌は伝わっていたらしい。


「その女好き、なんとかしたらどうだ」
「そんなこと言ったって……」ロキは苦笑する。「女の子はかわいいから好きなんだ」
「お前なぁ……」
「グレイも好きだよ」
「あ゙い?」一瞬ハッピー化したグレイ。「……悪い。俺そーゆー趣味は……」
「うん。だから、その程度」
「は?」
「僕にとってルーシィ以外はグレイ程度でしかないんだよ。……まあ以下ってことはないけど」ボソッ。
「……オイ、何気に俺に失礼なこと言ってねーか?」


グレイが顔を引き攣らせる。
ロキはわざと「?」という顔をしてみせて。
それから飛び切りの営業スマイルをつくった。


「好きだよグレイ」
「やかましいわ!」


歯を剥き出すグレイは置いといて、ロキはルーシィを振り向き手を振ってみる。しかしルーシィは見えないふり。代わりにミラジェーンが応えてくれた。
これは相当キてるな〜、と苦笑して頭を戻せば。
グレイが睨むようにロキを見ていた。


「……なあ、他の女は俺程度っつったけどよ」
「以下はないよ」
「るせ。――だったら、お前にとってルーシィは何なんだよ」
「……ルーシィ、は……」


あのコは。
温もりをくれた。優しさをくれた。一度捨てたはずの命を繋いでくれた。
大好きで、誰よりも大切で。


“たぶん”――契約者を超えた特別なヒト。


でも。
それをルーシィが望まないなら――


サングラスの下。いつになく真剣な瞳がグレイに見えないよう、うつむく。ルーシィのことを考えるだけで変わってしまう自分の瞳が隠れるように。
やがて、いつもの笑顔でコーティングした顔を上げる。


「――飼い主、かなぁ」
「…………は?」
「ルーシィが望んだ時にご奉仕するんだ。――主にベットの中で、ね」
「う、嘘だろ……?」
「うん。嘘」
「……てめぇ一発殴らせろ」
「星霊虐待反対〜」


ははは、と笑って両手を上げる。
笑って言葉で転がして、何かをごまかす癖は人間界で過ごした3年間ですっかり身についていた。
ロキは席を立つ。


「そろそろルーシィのとこ行ってくるね」
「ちゃんと謝れよ」
「なんで?」
「なんでって……」
「――ルーシィはそんなの望んでないよ」
「はぁ?」


と怪訝な顔をするグレイに背を向ける。


ルーシィは、嫉妬なんて認めない。
だから、ロキも自分の気持ちを認めない。“たぶん”のままで隠し通す。


サングラスはいつからかそのために。
変わった視線に少しでもルーシィが気付かないフリをしやすいように。


「――ロキ」


グレイに呼ばれ、首だけで振り向く。


「お前……無理すんなよ」
「………」


グレイはそれだけ言って、とっとと行けと空を手で払う。
ロキの異変に気付いて、でも踏み込んではこない。それでも適度な距離から仲間を案じてる。
その男のロキから見てもカッコイイ、グレイの態度に。
ロキはあーあ、と呟いた。


「……僕、やっぱり君のこともっと好きだな」
「おー、女を越したか?」
「――うん」


ロキは笑顔で言った。


「ハッピーの次くらい」
「猫以下か!」









>>【cherish】
 2<望み・考え・感情など>を(大切に)心に抱く[持ち続ける]
(ジーニアス英和辞典第3版より一部抜粋)







* * *
むやみやたらに「好きだよ」と囁くロキが書きたかった。グレイとロキは仲良しちゃん。
そしてこっちが本題。グレイの「あ゙い?」が本題。
思ったより短くなってビビる。もっとボケたかった。もっとグレイを転がしてやりたかった。
しばらくロキルーおやすみ。

[*前へ][次へ#]

あきゅろす。
無料HPエムペ!