Joker【N*L】#
最近、ルーシィに触ってないと落ち着かない。
それは日に日に酷くなっていって。
重症化して。
とりあえず見たら触っとけ、とルーシィを見つけるたび無許可にあちこちに触ってた(時々殴られた)。
でも、3日程前。
カウンターの下でこっそりと手を繋いだ。
いつもより全然小さい、たった20センチメートル四方の接触。
たぶん初めてルーシィから許可された接触。
それは薬にはならなかった。
むしろ、その逆に。
触りたいっていう欲求をもっともっと悪化させた。
Joker
「……で、今日は何の用かしら?火竜さん?」
風呂から上がったばかりのルーシィは苛々と足を貧乏揺すり。
濡れた髪を頭の上で纏め、タオル一枚で壁に寄り掛かる。
今日のルーシィは珍しく不法侵入したナツを見るなり蹴ったりはしなかった。いや、もしくは溜めているのかもしれない。くだらない理由を言った瞬間、火を噴くのかも。
それでも、ナツはけろりとして。
「そりゃあスキンシップを゙ぁはっ!?」
今日はアッパーカットだった。ナツにも見えない神速の踏み込み、死角から突き上げるカミソリのような拳。
ナツの頭は跳ね上がり、床に仰向けにひっくり返る。
カンカンカーン。どこかで試合終了のゴングが鳴った。
ルーシィは手をぱんぱんとはたきながら、
「か・え・れー、か・え・れー、か・え・れー」
無情な一人帰れコール。
「お、お前最近とことんひでぇよな……」
身を起こしてルーシィを非難がましく睨むナツ。ルーシィは「たくましくなったと言って」と鼻を鳴らし、
「あれ?ハッピーは?」
といつもなら喧しい青い猫を捜す。ナツにツッコんだらハッピーにも容赦なく、というのがルーシィである。
「ん」とナツは顎でベッドを示す。
「は?」とルーシィはナツの視線を追って――
「ああっ、私のベッド!」
きちんと整えてあったはずのそこはめちゃめちゃにされ、ハッピーがその真ん中で、でん、と腹を出して寝ている。
「お前風呂なげーからハッピーと少し寝ちまった」
「勝手に寝るな!?」
ってゆーかいつ来たのよもー、とぼやきながらも幸せそうに眠るハッピーには何も言えなくなるルーシィ。ハッピーをよけてベッドを整えながら「このバカ猫ー」と軽くハッピーの頬を指で突いた。
なんだこの扱いの違い。なんだか急にムッとしたナツは椅子にどっかと座り、
「はーあ、しかしあれか?このうちは客人に茶も出さねぇのか」
「な、何を偉そうに」
「どんな教育受けたんだろうなぁ?親の顔見てーわ」
「くっ……ああもう、着替えてくるからちょっと待ってなさい!」
ルーシィが再び脱衣所に戻ろうとすると。
着替え?それはまずい、とナツは思った。
折角、時間を見計らって来たのに。折角、風呂上がりの時間を。
触りたいのに。白い肌に。
余計なものを身に纏っていない、今。触ってみたいのに。
思考は一瞬。
ナツはルーシィの後を追って。
後ろから、肩に両腕を絡めた。
「なななナツ?」
「んー」
ナツはぐりぐりとルーシィのうなじに頭を擦り付ける。猫が甘えるように。
風呂あがりだからか、甘い匂いがいつもより強い。ただルーシィ本人の持つ匂いが薄れてるのが少し残念だ。
ルーシィは「もー」と嘆息し――相変わらずナツに対しては警戒値ゼロ――ナツの手をぽんぽんと叩いた。
「わかったわよ。今すぐお茶いれてあげるから」
「そんなもん後でいいし」
「はぁ?ってコラ!?」
突然ナツはルーシィのタオルを掴んだ。「ちょっ」とルーシィは慌ててタオルの結び目を押さえる。
「こここコラ、タオルが取れるっ!」
「取ればいいじゃねーか」
「よくない!?」
「大丈夫だって」
「大丈夫じゃなーい!」
いくらアンタに下心がなくても絶対嫌ー!、と叫ぶルーシィに。
下心、なんて。
触りたい時点で下心じゃねぇのかなぁ?なんて思いながら。
「ちょっとだけだって」
普段は髪で隠されているうなじを指で、つつ〜、となぞりあげる。
「ひゃんっ」
ビクッと身体が跳ねる。変な声出た!とルーシィの耳が赤くなった。
その隙にタオルを解く。
「こ、こら!馬鹿!」
はらり、と床に落ちたタオルを追って慌てて座り込み、再びタオルで身体を隠そうとするルーシィ。ナツはその肩を掴んでそのまま床に座り込ませた。
これでタオルは巻き付けられない。
「あわわわ見るなっ!」
肩を上から押さえ込まれながらもタオルを掻き寄せ、前だけは隠すルーシィ。
「いや裸に興味ねーし」
「それはそれで腹立つわね」
「だから、触るだけ」
「もっと嫌ー!?」
と這ってでも逃げようとするルーシィの肩を「まあまあ」と腕力で押さえ込みながら、ナツは不思議そうに首を傾げた。
「なんで嫌がるんだ?あの時は触らせてくれたじゃねぇか」
「は?あの時、って」
「ギルドのカウンターで」
「………あ」
ルーシィは急に暴れるのをやめて大人しくなる。
かああ、とタオルが取られた時よりも赤くなり、「あ、あれとこれは話が別……」ともごもご。
「同じだって」
「ち、ちが」
「同じ同じ」
「でも」
「おーなーじっ」
同じ同じと洗脳するように繰り返せば、いろいろなことでテンパッていたルーシィは。
「お、同じ……なのかな?あれ?同じだっけ?あれー?でも……あれ?」とぶつぶつ呟いて。
「ルーシィ――触るだけだから」
ナツの一押しに。
ルーシィはようやく覚悟を決めたようだった。暴れるのをやめ、タオルで前だけは隠しながら「後ろから、なら」と小さく頷いた。
結局、ナツに“そういう気”がないことを1番知っているのはルーシィなのだ。そういうところだけは信頼している。
「へ、変なとこは駄目だからね……む、胸とかししし下とか」
「胸は駄目、な。おっけー」
ナツは無邪気な笑顔で頷いた。
ルーシィは胸を隠すように腕に抱えながら、ナツに背中を差し出す。ナツはその場に座り込むと、まずルーシィの背中をとっくり観察した。
ほっそりとした、滑らかな白い背中。細身だが骨ばっているわけではなく、程よく丸みを帯びた柔らかな曲線。
いつもは布で必ず一部は隠れているそこは、今日尻のラインまで少しも邪魔なく曝されている。
「……あんた今めちゃめちゃ見てない?」
「背中ならいいだろ」
言って、ナツは無造作に手の平でぺたぺた触った。風呂上がりで熱いかと思えばもうすっかり冷えていた。よく覚えてる、いつものルーシィの体温。
でもなんとなくつまらなくて。
つつ〜、と背中を指でなぞる。
「ひわわわわ」
情けない声をあげて身をすくませるルーシィ。
「はは、変な声ー」と笑えば「うるさいっ」と睨まれる。
ナツはそのまま指の腹だけで肌を軽く揉むように撫でて。
するり、と腰から両手を前に滑らせた。
「コラっ……約束が!」
「腹だけ」
「腹って……」
ルーシィの腰周りは細いくせに妙に抱き心地がいいことをナツは知っている。
身を抱えて小さくなっているルーシィの身体を足でも抱え込んだ。
「うぅ……」
ルーシィはふるふる身を震わせた。寒いのかと思い身体を密着させるとさらに震える。
手が微かに豊かな乳房にあたると「駄目!」とルーシィは急に噛み付くように叫んでナツを睨む。
「そ、それ以上手が上にいったら殺すわよ」
「乳に興味ねーし」
「くっ、それもそれで悔しい……!」
乳房には触れず、その下――ぎりぎりを。
「ほーれこちょこちょー」
「ほぇ?きゃはははは!や、やめ……」
「おお?ここか?ここがええのんかー?」
「オヤジか!……って、ひゃは、ひはははは!?」
「ほうほう、じゃあここは?」
「きゃはは死ぬ死ぬ死ぬ〜!?」
笑いに悶え転げるルーシィだったが、ナツのホールドは完璧で外れない。
やがて笑いすぎてぐったりとなったルーシィの隙を見たナツは。
するり、と右手を腿の間に手を入れようと――
「えっ?……やだっ!」
急にルーシィは暴れ出した。タオルがズレるのにもかまわず、ナツが押さえ込むために胸をわしづかみするように抱えても、混乱したように下肢にのびたナツの手を拒絶する。
仕方なくナツは、「まあまあ落ち着けよ」とルーシィの身体を一度両腕で抱き直す。
「もも肉触るだけだって」
「肉!?ってゆーか嘘だー!もっと変なトコに持って行こうとしたー!」
「いかねーって」
ルーシィのふとももの触り心地はすごくいい。なめらかで柔らかくて、指に吸い付く感じなのだ。
いつもスカートが邪魔してた部分を、どうしても触ってみたかった。
あの中――できればもう少し奥。いつも手を叩かれて落とされた、その先。
「駄目!絶対駄目!」
「ルーシィ」
「嫌だってば!」
「頼むって」
言いながら足を閉じられないように膝の間に肘を捩り込む。
「コラ!ってゆーかよく考えたらやっぱり変だわこんなの今更だけど!」
「あーホント今更だな」
「そっ、そう思ってんならなんでこんなことっ」
「好きだから」
「い……え?今なんて……ひゃんっ」
膝から内股へ。中指を中央にむけてゆっくり滑らせると。
ヒクヒク、とナツの腕の中でルーシィの身体が切なげに震えた。
「だ、駄目っ……ねぇ、ちょっと……!」
「もーちょっと」
知りたい。触りたい。感じたい。
今のナツには純粋な好奇心しかない。
少しずつ、唯一タオルで隠された部分が近付いて。
「あ……やぁっ」
タオルを下に押しやりながら、足の付け根付近。
いつも隠れているところより、少し奥に到達して。
あとちょっとのところで。
「――ナ、ツゥ……」
「っ!」
その呼び声に電流が走る。
思わずナツがしたのは、その先に指を進めること――ではなかった。
震えるルーシィを強く抱きしめて。とにかく衝動のまま抱きしめて。
白い肩に唇を落とすことだった。
「ひゃわわわっ?」
途端に上がる、色気もへったくれもない声。
ナツはハッと我に返る。
「わ、わりぃ……」
ぎこちなく離れてルーシィに背を向けた。
ルーシィは「?」と乱れた息を調え、タオルを巻き直しながらナツをきょとんと見る。
なんだ、今の。
変な声出しやがって。名前なんか呼びやがって。
あぐらをかいて口を覆い、今にも垂れ流しそうになる思考を遮る。
つーか俺。
今この口で何を――
「……ナツ?」
「な、なんでもねー」
「なんでもないって、アンタなんか顔赤いわよ?」
大丈夫?なんて。
今まで必死に暴れて、息も絶え絶えな奴に言われたくはないナツである。
漸く妙な動悸がおさまったところで、ナツはルーシィに再び向き直った。
「……だったら、ルーシィが暴れなきゃよかったんだ」
「あ、あんたが変なことばっかりするからでしょー!?私裸なのにひどいじゃない!」
「――だからじゃねーか」
「は?」
「だからルーシィを触るんじゃねーか」
ナツは真っ直ぐルーシィを見た。「ちょっ、何言って……」と戸惑うルーシィの床に着いた手にそっと自分のそれを重ねる。
「――触りてぇんだよルーシィに。服の上からじゃなくて、ルーシィだけに」
触りたい。知りたい。感じたい。
ルーシィを全部全部。
そんなどこまでも純粋な考えの何処を咎められなくてはならないのだろうか。
「あ……あんた何言ってんのよ」
恥ずかしいじゃない、と茹で上がるルーシィに。
あ、そうか、とナツは思い付く。
「なら」と強くルーシィの手を握って。
「俺も脱ぐか?」
無言の右ストレートがその答えだった。
>>【Joker】
1《略式》冗談を言う人,いたずら好きの人
2bうぬぼれ屋,いたずら者
(ジーニアス英和辞典第3版より一部抜粋)
「ってゆーかなんでここんとこ急に触りたがるようになったのよ」
きちんと服を身につけたルーシィは自分とナツの紅茶をいれて、そんなことを訊いてきた。
平然とした顔で、やはり先程のことは一種のじゃれつきのようなものとでも思っているのか。
――いや、違うな、とナツは思った。
いつもならキャミソールだけのくせに、今日はカーディガンを羽織ってる。少しだけ、ナツを意識してる証拠ではないだろうか。
「んー……」とナツはちょっと溜めて。
「好きだから」
「ブバッ」
ルーシィは紅茶を逆流させた。
「きったねーな」とちゃっかり自分の紅茶と菓子を避難させるナツ。
慌てて布巾でテーブルを拭いながらルーシィは、ナツを見た。
「いいい今何て……ってててゆーか、さささ触ってる時もそれ言わなかったっ?」
「おう、言った言った」
ルーシィさっきから全然テーブル拭けてねーなぁ、と思いながらナツは頷いた。
「ルーシィに触るのが好きだから触るんだ」
「さ、触る……ああ……そ、そーゆーことね……あーびっくりしたー……」
ルーシィはほっと胸を撫で下ろした。
それから今度はちゃんと紅茶を拭き取り、だいぶ少なくなった残りのそれを一口。
「……でも、あーゆーのはもう困るわ」
「? なんでだ?」
「私たち、つ、つつ付き合ってるわけじゃないのにやっぱりおかしいもんっ」
それにナツは。
「ふーん」と唸って。
「じゃあ付き合うか」
「……最っ低ー」
睨まれた。
冗談だと思われてるわけか、とナツはちょっとむくれた。
触りたいのは、ルーシィだけだし。
知りたいのも、ルーシィだけだし。
感じたいのも、ルーシィだけだし。
ナツには純粋に“ルーシィ”だけなのに。
触るのは、駄目なんて。
付き合うのも、駄目なんて。
「……わかった。もう手じゃ触らねーよ」
「そうね。そうし――手じゃ?」
とルーシィの眉間に皺が寄った瞬間。
いきなり、ちゅ、とルーシィの頬にナツの唇が触れた。
凝固するルーシィにナツは無邪気に笑い、
「もう手はやめる。手より口のほうがいいってわかったしな」
「ええ?」
あっという間にルーシィに覆い被さると床に押し倒した。
「ちょ、や、あ、こら、ば、かっ、あぅ」
上に乗っかるマウントの体勢で、ちゅ、ちゅ、ちゅと首筋に軽く唇を落として。
少しずつ下に。
「――ちょ、ちょ、う、しにっ」
カーディガンをはだけさせて、胸元をにもたくさんして。
それからキャミソールをずらそうとして。
「乗るなあああああああああ!?」
「ぐも゙ぉ!?」
本日初ボディに悶絶した。
* * *
シリアスなR-15があるなら、どこまでもおばかなR-15があったってええやないかと思ったのに。
やりすぎた。
スカートの中見たいって中2病が中まで触りたい高2病になったと思ってくれればいい。
うん。いろいろやり過ぎた。ごめんなさいごめんなさい。本当は更新したくなかったことわかってください。あ、はじめの一歩、好きだぜ!ごめんなさい。
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