H+【R*L】 泣いた。 初めて、それの前で。 本当はこんな姿見せたら駄目だってわかったけど、今帰らせたら二度と来てくれないと思って。 二度と、へにょにょんとした優しい笑顔を、見せてくれないと思って。 なのにそれは星霊界に帰らせろとか言うし。すぐ帰るとか見え透いたこと言うし。 だから、ふざけんじゃないわよ、と禁じてやれば。 泣きそうな、顔になって。 こっちが泣きたいはずなのに、こっちが悪いような気になってきて。 で。 最終的に。 「トイレ貸して下さい」 って――なんだそりゃあああああああ H+ 「あああああ〜……」 なんて唸りながらルーシィは天井を見上げた。すっかり涙はひいていたが、独特の疲労感だけは残っている。 ここまで泣き切ったのは、いつ以来だろう。子供みたいに膝を抱えて、声を殺して。 怖かった?嫌だった?悲しかった?驚いた?悔しかった?恥ずかしかった? それのどれでもあってどれでもない。そしてその感情がどこに向けられたものなのかもわからない。ルーシィには全部複雑すぎた。 「………」 またロキを傷つけたのだろうか、と泣きながらずっとルーシィは考えていた。また、あの優しい星霊を。 でも。 自分を責める前に、まずロキと話をしなくては。 ルーシィが自分を責めれば責めるほど、ロキのほうが自分自身を責めるのだ。 笑顔の下で、泣くのだ。 優しい星霊。 大好きな星霊。 大好きな―― 「っし」 気合いをいれてベッドから立ち上がり、洗面所に向かう。ぐしゃぐしゃになった顔を冷たい水でぱしゃぱしゃ洗い、タオルで拭って。 それから鏡に映る自分を確認し、酷い顔だ、と苦笑。タオルでも蒸して目の腫れを引かせるか、と移動しようとして。 ふと何かが引っ掛かって再び鏡を覗き込めば―― 「うわ!」 右鎖骨下に、虫に刺されたような痕跡発見。 慌ててリビングに戻りパーカーを着込む。見てるのも恥ずかしいし――ロキが見たらきっと気にするから。 他にはないかな……と鏡を見ながらされたことを思い出し―― ち、ちく、乳首舐められたんだ! 思い出して真っ赤になって、あわあわあわと今更胸を隠すように抱え込み、また泣きたくなる。 「ぁう……」 一度意識してしまうと、何故か急につい先程行われたことをいろいろ鮮明に思い出してしまう。 そうだ。あの時のロキは、激しかった――とか言ったら、少し聞こえはエロいけど、激しかったのだ。 キスも触り方も、もちろんだけど。 クソッなんて、あんな乱暴な舌打ち、ロキでもするんだって思った。 いつも優しい紳士なロキ。ルーシィにはとことん甘いロキ。 そんなロキがルーシィに見せた激しい“男”の一面。そんな顔で―― 「………ち」 乳首なめられたちくびなめられたちくびなめられたっ!しかもひって声しか出せなくてそれってどーなのだってあーゆーときはあんとか可愛く鳴くもんじゃないのよよよよくわからないけどっ!みたいに考えたりして。さらには考えた自分にあわわわ今なら私死ねる恥ずかしさで死ねるわ殺して誰かあああああ――ってなって。 「………」 他にもたくさん触れられた。胸だって触られた。腰も、脚も、大きな手で。 あんなこと、誰にもされたことない。 させたくもない。 許さない。 ――ロキ以外。 ででででもあのちちちちくびはぁああああああうあうあうあう〜と再び独り懇々と悶えた乙女は。 「――ってゆーかロキ遅いわね……」 ふと、あまりにも戻ってこないロキに気付く。もう20分にはなるんじゃないだろうか。体感なので、確信はないが。 トイレでなんでそんなに時間かかるのかしら。 ってゆーか星霊ってトイレ行くの?どうなの? 「……まさか」 トイレ行くフリして逃げた!? アイツ!と舌打ちして、慌ててトイレに向かう。 トイレにはちゃんと内側から鍵がかかってはいた。 でもまだわからない。ノックしようとしたら。 『っは……』 薄い壁を隔てた中から、声。 とりあえずちゃんと居るのがわかってルーシィはほっとした。 逃げないでいてくれた。 これなら気まずいけど、ちゃんと話ができる。 でも、その漏れた声が気になる。 もしかして気分でも悪いのかな、と思って声をかけようとしたルーシィに。 『………っ』 聞こえたのは小さな息遣い。 何やら切実な。 そのくせ、えらい艶っぽい。 なんてゆーか、えっちな。 「???」 これは聞いちゃいけない――と本能的な部分が言った。ルーシィは慌てて部屋に戻った。忍び足は忘れずに。 なんだかいけないことをしたようで、ルーシィの心臓はバクバク言う。 ――ななな何してたんだろう……? 未だ戻らないロキのいるほうをチラリと見て。 とりあえず蒸しタオルをつくりながら、出て来たらきいてみようかな、と思った。 >>【H】 3第8番目(のもの) (ジーニアス英和辞典より一部抜粋) * * * ルーシィ、きかないでやってくれ……。全体的に下品ですまそ。 正直ルーシィに「ちくび〜」叫ばせたかったん。そのための前回のこだわり描写。そのための“+”。……変態ですが、何か? 次回ラストワン。気が向いたら書き始めるよ……。 [*前へ][次へ#] |