story キッチンA(ナギ→主←シン) 「ナギ、コーヒーを頼む」 いつものように、何もなかったかのように、キッチンにシンが入って来た。 オレは言いたい事はあったがそれを呑み込み、湯を沸かす。 シンは、食堂に行き持ってきた本を開いた。 しばらく、湯を沸かす音と紙をめくる音だけが響く。 シンは毎日のように○○をからかっては、楽しんでいるようだが 真面目で天然な○○は、シンの言葉を真に受けて、落ち込んではドクターやオレの所にくる。 昨日は話してるうちに泣き出す始末。 さすがに、今回はひとこと言いたかった。 オレは、出来立てのコーヒーをシンのテーブルにコトリと置く。 シンは本から目を離さずに 「悪いな」 と言った。 そして、すぐにキッチンに戻らないオレに気付き、顔をあげた。 「なんだ」 「…シン、いい加減にしろよな」 「なんの事だ」 「○○をからかう事だ」 「ああ」 なんだそんなことかとでも言うような素っ気ない返事。 「○○、昨日オレの所に来て泣いてた…」 オレの言葉に一瞬驚いた様子を見せたシンだったが 視線だけそらし、腕を組むとニヤリと笑いこっちをみた。 「敵がいたほうが、好都合なんじゃないか?○○の気を自分に向けられるだろ」 「なに!?」 頭に血がガッと登って、つかみかかりそうになるのを自制心で抑えた。 「あいつの事好きなんだろ」 「……」(話しをすり替えるな) 「フン。そうやって黙って逃げるなよ」 「……」(逃げてねぇ) 「…なんとか言えよ」 シンは、挑発的な表情で立ち上がり 息がかかりそうな、距離まで顔を近づけてきた。 「……オレはあいつが好きだ」 つい口走ってしまった。 シンはニヤッと笑って テーブルの本を持つと 俺の肩をポンとたたくと 「お互いがんばろうぜ」 といって 食堂から出て行ってしまった。 ………………… ○○side さて、次はナギさんのお手伝いだなぁ。 今日は 晩御飯、何を作るんだろうな。 食堂を通りすぎてキッチンに行こうとしたら、シンさんとナギさんの話し声。 なんだか、二人とも真剣な感じ… 聞いちゃいけないんだろうけど、どうしよう… ここを通らないとキッチンにいけないし。 中から話し声が… 「…あいつが好きだ」 !! 聞いちゃいけない話だよね…。 どうしよう! ドキドキしてきた。 ナギさんには、誰か好きな人がいるんだよね。 どこの港の人だろう…。 はっ!誰か来る!! 「シ、シンさん!!」 シンさんは、食堂の入り口の影にいる私を見つけると ジロッと私を見て、何も言わずに去って行った。 あわわ。何だろう。 どうしたらいいんだろう。 すると、ナギさんがキッチンに向かおうと 出てきた。 「「!」」 二人で目があうと、ナギさんは顔を赤くして、手をおでこに当てて、目線をそらした。 …………………… ナギside 「○○!」 今の聞かれた?? 「今の…」 「ごめんなさい。たち聞きするつもりはなかったんです」 「どこから聞いてた」 「えっと…。あいつが好きだ…を聞きました」 …絶妙のタイミング…… 「あの…」 「なんだ」 「がんばってください!!」 「ああ。がんばる」 「あの。…えっと」 「○○」 「はい?」 「○○は、○○のまま、いつもどおりやればいい」 「はい!」 その笑顔は、反則…。可愛すぎる…。 どうやら、こいつは勘違いしてるようだな。 どう理解したかは、まあいいか。 さて、気を取り直して 「仕込みするぞ」 「はい!!」 おしまい [*前へ][次へ#] [戻る] |