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いつも僕らは(沖新)

生まれたときから家が近所で、最初で、1番の友達。何より、姉上同士が仲良しで互いの家に一緒に連れられて、よく遊びに行くことが多かった。物心つく前から一緒に居た、物心付いてからもずっと幼稚園も小学校も中学校も、高校だって一緒になった。いつだって一緒に居たんだ。俺は独占欲の強い方で、小さい頃は俺の姉上に可愛がられてた新八に嫉妬して、八つ当たりしてケンカしちまったこともある。流石に高校3年生ともなれば、姉上を誰かに取られるだとか、ましてや新八に嫉妬なんてしなくなった。俺は・・・、幼稚園ぐらいから初恋のヤツを取られないようにヤキモキしたり、アイツが笑いかける相手に嫉妬したりでいっぱいいっぱいだった。そう、俺は新八にずっと昔から恋をしてる。ずっと想って想って、それでも気持ちは伝えないまま今まで一緒に居た。でも、それも高校の卒業式に終わらせるつもりだった。卒業式に告白して、大学になったら一緒に2人暮らしでもしようって言うつもりだったんだ。

なのに・・・、

担任の国語準備室に用があり、ノックも無しにドアを開けて入ろうとしたとき、中から新八と銀八の声が聞こえた。立ち聞きは趣味じゃねぇが、やたらと切羽詰った新八の声に首を傾げていると、目の前のドアが勢いよく横にスライドしたかと思えば新八が走り出てきた。が、ドアの正面には俺が居た訳で思いっきり体当たりを食らった訳で。俺の剣道部で鍛えた身体に耐え切れなかった新八は後ろに倒れ、床に尻餅をついた。

「何があったんで?」
腕を掴んで引っ張り起こすも、新八に反応はない。少し動揺したのか揺らいだ瞳を見つめていると、気づいたように慌てて「なんでもないから!」と俺の脇をすり抜けて廊下をあっという間に駆け抜けていった。

新八が俺に隠し事・・・ねぇ、俺の殺気に気づいたのか白髪天パの担任は慌てて首を横に振って「俺じゃねぇぞ!」と叫んだ。
「じゃあ何なんで?」
「コレだよコレ」
銀八が俺に手渡したのはこの時期には見慣れた進路調査表。氏名には志村新八、志望は進学で俺と同じ大学(新八が行きたいと言っていたから同じにした)だった筈・・・の欄には就職と書かれていた。
「親御さんのことを考えてだろうな。一応頑張って奨学金も申し込んでたが・・・」
俺は調査票を握り締め、廊下へ駆け出した。



新八が居る場所は検討がついていて、俺は教室に新八が居ないこと、荷物が無い事を確認すると自転車で猛スピードを出して家に向かった。家の階段を駆け上がり、息を切らしながら俺の部屋のドアを開けると、俺のベッドの布団が小山になっていた。そう、新八は小さい頃から新八の姉上に怒られたり、怖いこと、嫌なことがあるとうちに来てなぜか俺の部屋の布団に包まった。
「・・・なにやってんでィ」
俺から逃げたってのに、いつも通り俺の部屋で布団に包まってる新八に安堵や色んな感情から溜息が出て、小山の横に腰を下ろした。

「・・・僕、総悟とは同じ学校に行けない」
「別にいいですぜ」
「へ?」
「でも、俺も進路変更するけど怒んなよ」
暫くの沈黙のあと、わかったと小さく短い返事が布団から聞こえた。新八の居ない大学にわざわざ行っても意味なんてねぇしな。
「で、就職先は良さそうなトコあったのか?」
「・・・一応は、服部先生にお願いして探して貰ってる。まだ就職希望生が固まってないから就職案内は少し先になるって。でも、一週間以内には就職口に全部挨拶行き終わるって言ってたから、掲示も・・・もうすぐじゃないかな」
そう言うと、俺が怒ってないことが分かったのか新八がムクリと起き上がり、布団は被ったままで俺に向き直って座った。
「・・・就職は嫌じゃないんだよ」
「俺は嫌だけど」
「うん。僕も、総悟と離れたくない。いつも一緒に居て、でも・・・大人になって、離れていくのが怖いよ」
しってる、お前が俺を必要としてること。でも、それは『友達』としてときっとお前は思ってるんだろう。それでも、今まではそれでもお前が俺を求めてくれることが嬉しかった。「1番は総悟なんだ」そう、笑ってくれるだけで誰より幸せだったし、満足してた。

だけど・・・そいつは俺がまだガキだった頃の話だ。俺は・・・もう、ガキじゃない。純粋に『オトモダチ』を好きなヤツとやれる時期はとっくの昔に終わってる。オトモダチで夢精して、オトモダチで抜くなんて有り得ない。俺は、これで終わるつもりはないんだ。
ベッドに座ったまま少し、新八に近づくだけで俺達の距離は縮まり、壁際にベッドを寄せているお陰で新八は俺にベッドの壁際に追いやられた。不思議そうに見上げてくる瞳に、俺はどう映っているんだろう。その瞳に恐怖は感じられないのがまだ救いか。俺は新八に覆いかぶさるようにして、その唇に口付けた。

「俺は、お前とずっと一緒に居たい。友達としてより、恋人としてお前が好きだ」

俺の頭に過ぎる拒絶、新八からの拒絶なんて俺は耐えられるのかと弱気になり、それ以上何も言い出せずに固まっていると、キョトンとしたままだった新八の顔がみるみる内に真っ赤になっていく。

「・・・あ、アンタはなんでそうも恥ずかしいことを改めて言えるんですか!!」

は?改めて・・・?

「え、」
「ぼ、僕だってそういう意味でずっと総悟と一緒に居たいって言ったんだけど!」

「え!?いつんなこと」
「幼稚園の卒園式に総悟が今のと同じこと言ってた」
幼稚園児の癖してなに色気づいてんだ俺ェェェ!!つーか、早まり過ぎっつーか馬鹿!!忘れてたしな!新八もおま、それで良かったのか・・・ぐるぐると考えていると、困ったように新八が笑ったかと思うと、俺の頬に温かい感触。チュッと可愛い音を立てて新八が俺の頬にキスをした。

「僕も、総悟が好きだから一緒に居たいんだからね」
「・・・へい、肝に銘じておきまさァ」
抱き寄せた体温は俺より少し高い平熱36℃、少し低い俺の平熱35℃ちょっと。この溶け合った体温を逃がさないように、強く抱きしめた。

いつも僕らは傍に居た。悲しいとき、辛いとき、嬉しいとき。ずっとずっと

これからも、ずっとずっと傍に―





END


流総さんへ押し付・・・捧げます!以前に話していた即席小説ですが、よろしければお持ち帰り下さいませ!どうしてこうも、俺の幼馴染は鈍感なんだろうか。



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