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褪ロラ
15



 どうしよう。まるで相手にされていない。何の役にも立てないかもしれないけれど、僕だって君のことが心配なのに。
 アキくんはすでに一直線に”影”のもとに走り出していて、エルドさんもそれを慌てて追い掛けて行った。もうあの二人をあてにすることはできない。否、もとより人任せにするつもりはなかった。したくなかった。
 だって、ロヴィのことを心配しているのは、誰でもない、僕なのだ。

 「ロヴィは、前に言ってた。いつまでも僕のことを、その、守ってはくれないって。だから……」
 「うっせえぞ、馬鹿。そういうことはまともに動けるようになってから言えっての。お前のへろへろマラソン、俺はちゃんと見てたんだからな?」
 「っ……!?」

 痛いところを突かれた。その通りである。そして実際、僕の体は今どこもかしこも深刻な筋肉痛を訴えている。
 ふっと、軽く溜息を吐いて、ロヴィは僕を振り返った。
 その顔に浮かんでいたのは、とても柔らかくて優しい笑みだった。

 「しょうがねえなあ……。心配すんなって、怖いことなんて何にもねえからさ。おにーちゃんに任せとけ! な?」

 わしわしと頭を掴まれて、またいつものように力加減の雑な手付きで髪を乱される。乱暴に撫でられて、少し首が痛かった。けれど多分、これが彼なりの親愛の証。
 
 「おいこら!? 何サボってやがんだ、さっさと来い!!」

 僕と話している間、自然ともう一体の”影”を引き受けることになったエルドさんが、切実な怒鳴り声を上げた。どうやら本気で怒っているみたいだ。
 僕がロヴィを引き止めていたせいだ。申し訳ないことをしてしまったなと、そんなことを考えているうちにいつの間にかロヴィは走り出していて、もう追い付くことは出来そうになかった。
 結局、僕はまたこうして、一人で戦う彼の背中を見ている。

 「お前の相手は、こっちだ、よ……!」

 跳躍したロヴィのブーツの爪先が”影”の脚にめり込んで、わずかによろめきながら巨体が振り返る。そこで彼の姿をはっきりと認識した”影”は、大きな口をがばりと開けて再び咆哮を上げた。
 荒々しい、開戦の合図だった。

 ところが。
 軽やかに着地して、改めてナイフを構え直したロヴィの目の前で、突然”影”の体が傾いだ。傾いた体をどうにか支えようと膝らしき関節を折って、危うくバランスを取る。
 誰も、何もしていないはずだ。ロヴィと交替したエルドさんはすぐにもアキくんの援護に回って、向こうでもう一体の相手をしている。こちらの戦闘に干渉するような動きは見せていなかった。
 と、すれば。次に考えられるのは。
 ――第三者の存在である。





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あきゅろす。
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