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褪ロラ
4

 「生憎だが今は非常時でね、突然家に上がり込まれれば警戒するのも当然じゃないか?」
 「だからってな、いきなり……」
 「だから、それはこちらのセリフだと言ってる」
 「……っ、俺は止めたんだよ! なのにこいつが勝手に入るから!!」

 僕の頭の上でロヴィと男が言い争いをしている。が、生憎僕は今それどころではなかった。

 「ロヴィ、膝が痛い」
 「お前、あとちょっとで死ぬとこだったってわかってるよな……?!」
 「うん……。でも膝が痛くて、立てない」
 「何が悲しくて一日に二回もこんなやつの命救ってんだ、俺……?」

 蹲りながら僕がそう訴えれば、ロヴィは何とも形容しがたい苦い顔をした。でも、だって、痛いものは痛いのだ。膝が痛い。こんな風に膝を強打したのは生まれて初めてかもしれない。

 「シャロン……? なに……?」

 ロヴィの頭よりもさらに高いところから、少年の声が降ってきた。痛む膝をさすりながらやっとのことで起き上がると、細身で小柄な人影が階段を下りてくるところだった。

 「ほら見ろ、お前たちが騒ぎ立てるから起こしてしまった」
 「おー、アキ! 久し振りだなあ!!」
 「…………どちらさま、ですか」
 「何だこれ、寝惚けてんの?」
 「寝惚けてるな」

 細くて色素の薄い髪が、一歩踏み出す度にふわりふわりと揺れる。金髪の男といい、ロヴィはこの少年とも知り合いのようだ。アキと呼ばれた少年は、ぼんやりとした眠そうな目で僕たち三人の顔を交互に見比べているようだった。
 シャロンというのは、この男の名前なのだろう。目つきの鋭い碧眼を少しだけ緩めて、彼は言った。

 「アキ、いいからお前は寝ていなさい」
 「……ううん、いい。起きる」

 欠伸をしながら首を振ったアキくんに、シャロンさんは軽く肩を竦めた。左肩に流した長い三つ編みが、かすかに揺れる。切れ長の翡翠が一瞬だけ僕を捉えて、すぐに逸らされた。

 「……非常識だが一応客だ。紅茶でも淹れてやってくれ」
 「わかった」



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あきゅろす。
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