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褪ロラ
4


 ――作戦、その一。
 これは、以前僕がロヴィにしてもらったこと。

 「お邪魔します……」

 鍵はかかっていなかったので、一応そう断ってから、僕はアキくんの寝室に足を踏み入れた。初めて入ったアキくんの部屋はとても綺麗に整頓されていて、手入れの行き届いた清潔感のある空間だった。
 ただ、部屋だけ見れば、その主が十三才の男の子だとはまず思わないだろう。シンプルなのはいいけれど、簡素にもほどがある。子供らしい要素と言えば、机の上の本棚に並ぶ教材の背表紙の文字だけである。それにしたところで、そのすぐ隣にはいかにも難解そうな分厚い専門書のようなものが鎮座しているのだから、もはや年齢不詳の感があった。
 そろそろとベッドに近付いてみれば、こちらに背を向ける形で横になっているアキくんの寝息が聞こえてきた。
 確かロヴィは、こんな風に――。

 「…………っ!?」
 「あ。アキく、痛……っ!」

 上から逆さまに覗き込んだ僕の気配に一瞬で気付いたアキくんの勘の良さはさすがである。たまたま眠りが浅かっただけかもしれないが、まともに寝顔を拝む間もなく僕は顎を掴まれて押し退けられた。
 舌を、強かに噛んだ。

 「なんで君がここにいるの……!?」
 「いたた……。えっと、お、起こしてあげようと……」
 「はあ……!? 俺がいつそんなこと頼んだ!?」
 「頼まれては、ないけど……。あいたっ」

 ぼふっと投げつけられたのは枕だった。

 「……出てって」
 「……あの、」
 「出てって」
 「……ご、ごめんなさい」

 怒ったときのアキくんは、どことなくシャロンさんに似ている。眉間に刻まれた深い皺とか、顔のつくりが整っているからこその迫力とか。血の繋がりはないはずなのに、やっぱり親子なんだと思う。

 「……何」
 「なんでも、ないです……」

 そのことを彼に伝えてあげるべきかどうかは、僕にはわからないけれど。




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