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褪ロラ
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 目が覚めると、見覚えのあるベッドに転がされていた。そこは第五支部の、僕に宛がわれた部屋だった。
 昨夜のことはちゃんと覚えている。シャロンさんのこと、アキくんのこと。そして、助けてくれたあの人のこと。
 アキくんをベッドに運んだことは確かだけれど、あの人とロヴィはちゃんと帰って来られただろうか。思い出すと、にわかに気が揉めた。僕は慌ただしく寝台から降りて、部屋を出た。

 そっと居間の扉を開けると、ソファからはみ出した長い脚が見えた。覗き込んで確かめれば、顔を腕で覆うようにして寝ているのはやはり昨夜の青年だった。癖の強い明るい色の髪が、重ねられた腕の下でぐしゃぐしゃになっている。

 「……ん」

 見下ろす僕の気配に気付いたのか寝息はすぐに途切れ、低い呻き声に変わった。

 「あ、……あの」
 「あー……。悪い、ちょっと寝てたわ……」

 欠伸をしながら起き上がった彼は、一度目元を擦ると、すぐにしゃんとした顔つきになって笑った。

 「昨夜はご苦労さん。大変だったろ、ガキ一人抱えてここまで運んでくるのは」
 「……うん。まだ腕とか、足とか、ちょっと変」
 「眠れたか」
 「うん」
 「ならよかった」

 不思議な雰囲気の人だった。面と向かっていても、緊張しない。僕は決して社交的な質ではないし、端的に言うなら人見知りだ。昨夜慌ただしく言葉を交わしたとは言え、ほとんど初対面みたいなものなのに。僕には珍しく、自然体で話すことが出来た。
 その時、天井の向こうで大きな音がした。どこかで扉が開いて、階段を駆け下りる音。
 瞬く間に足音はすぐそこまで迫ってきて、ものすごい勢いで居間の扉が開け放たれた。蝶番が軋み、ドアノブは壁に激突して跳ね返った。
 寝起きのアキくんが、肩で息をしながら立っていた。寝癖で髪が酷いことになっている。でも、今はそんなことにまで気が回らないのだろう。アキくんの金色の瞳はただ強い光を孕んで、僕の隣の青年を射殺さんばかりに睨んでいた。

 「誰」
 「……すごい剣幕だな」
 「どちら様ですか」
 「エルド」
 「名前を聞いてるんじゃない」
 「じゃあなんだ。生年月日か?」
 「誰に断ってここにいるの」
 「生憎、家主が死んじまってて断りようがなくてな」
 「……っ!」




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あきゅろす。
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