褪ロラ 0 覚えている最初の記憶は、夕暮れの空を背景に僕を覗き込む焦った顔。 目が合うとその人は、ほんの一瞬だけ、辛そうに顔を歪めた。 「……、ぁ……」 声をかけようと口を開いて、何の言葉も発せられないことに驚いた。そういえば手足の感覚もどこか曖昧で、視界だって霞みかけている。仰向けに倒れているのに、平衡感覚が馬鹿になったみたいに頭の中が揺れていて、吐き気がした。 「……お前、このままだと、もうすぐ死ぬ」 ――死ぬ? 「こんなこと急に言われても意味わかんねえだろうけど、時間もねえんだ」 ――時間がない? 「生きたいか」 ――僕は、 「まだ、死にたくないか?」 ――死にたく、ない。 「……わかった」 そう言ってその人は、少し笑った。 [次へ#] |