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褪ロラ
5
 ソファで寝息を立て始めたロヴィに、アキくんがどこからか持ってきたブランケットを掛けてやっている。洗い物を終えてエプロンを外した背中に、ふと思いつきで声を掛けた。

 「アキくん」
 「…………ヒロ、くん」

 振り返った金の瞳はびっくりしたように丸くなっていて、釣られて僕の目も丸くなる。初めて、アキくんに名前を呼ばれてしまった。ぎこちなくはあるけれど、なんだかくすぐったい。

 「二人は、親子なんだよね?」
 「はあ? ――……ああ、そうだけど、いきなり何?」
 「アキくんは、いくつだっけ」
 「十三。シャロンは二十八だよ。……本当の親子じゃないから」
 「え? …………あ。そうなんだ」

 アキくんのお父さんにしては若いなあと思っていたけれど、なるほどそういう事情があったのか。シャロンさんみたいに綺麗な人は若く見えるね、と言おうとしていたところだった。察しのいいアキくんに、簡単に先回りされてしまった。

 「そうなんだ、って……。普通なんとなく気付かない?」
 「気付かなかった。ごめん」
 「いや……、別に謝らなくてもいいけど」

 また、微妙な顔をされてしまった。
 呆れられてしまったかなと心配になったが、アキくんは少しの間の後、再び話し始めた。

 「俺、孤児だったんだよ」
 「……孤児」
 「親に捨てられてさ、施設にいたんだけど、十年前シャロンに引き取られてからはずっと一緒に暮らしてる」

 親に捨てられた、孤児。
 家事ができて、大人びていて、こんなにも気の利くとてもいい子が、親に捨てられたのだという。まだ出会って間もないけれど、僕には彼の落ち度とか欠点がまるで見つけられないのに。本当に、この世界はなんて――。
 そんな事情を本人自ら口にさせてしまったことに対して、さすがの僕も酷く罪悪感を覚えた。彼の淡々とした口調が、余計にそれを助長する。だからといって、この様子では聞いてしまったことを謝罪するのも違うのだろうけれど。




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