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褪ロラ
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 きっかけは、僕の記憶のことだったように思う。
 ロヴィに言われて自覚した僕の記憶喪失だけれど、実はアキくんやエルドさんも知らなかったらしい。僕はてっきりロヴィが二人にも話しているのだとばかり思っていたし、本人にもそう伝えたら、

 「俺は他人のプライベートな事情をホイホイ言いふらすような、デリカシーのねえ人間じゃねえ!」

 心外だとばかりに怒鳴り返されてしまった。

 「記憶喪失、ね……。まあ、そう言われるとしっくりはくるけど」

 アキくんは恬淡とした様子でそう分析して、

 「何にも記憶がないって、それ、大丈夫なのか? 生活するのに支障は……、なさそうだけど。家族とか、友達とか、本当に何も覚えてないのか……?」

 こちらが申し訳なくなるほどに心配してくれたのは、エルドさんだけだった。
 アキくんにもロヴィにも、ここのところ邪険にされてばかりだったから、彼の優しさが胸に染みた。

 「記憶はないけど、どうにか、なんとか、頑張ってます」

 それだけを、答えた。

 その後の話題は、僕の過去についての根拠のない空疎な憶測に始まり、僕以外のみんなの、昔のことにまで及んだ。
 ただ。
 ――ロヴィの過去についてだけは、誰も触れようとはしなかった。

 「そんな気分じゃないんだけど。……っていうか、シャロンとの思い出ってことで、前に散々話したじゃん。もう話すことなんてないよ」

 アキくんは話を振られて、すぐにそう突っぱねた。

 「そう言うエルドはどうなの。……これは、話せるわけ?」

 意趣返しのつもりだったのか、挑戦的な目で見上げるアキくんに、エルドさんはにこやかに頷いて見せた。

 「何も面白い話はないけど……そうだな。うちは医者の家系でな、親父は学会でもそこそこ有名な医師だった」

 これまで口を閉ざしてきた反動か。
 三年前のことについて、黙秘を貫き通すことへの代わりか。
 エルドさんは、やけに饒舌だった。

 「弟が、いたんだ」

 そっと呟いて、彼は遠い目をして話し始めた。

 「よく、一緒に遊んだ」





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あきゅろす。
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