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褪ロラ
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 一方で、食料や水の調達もなかなかに面倒であった。
 いつどこに組織の人間の目があるか知れないのである。
 尾行や監視には、どうにも過敏にならざるを得なかった。
 お金は今更惜しんだところで仕方がないので、食料の調達を当分せずに済むよう、携行食飲料水の類を持ち運べる限界まで買い込んだ。

 一所に留まることが危険を伴う行為になってしまったために、僕たちは居所を転々とすることを強いられている。
 昼間に寝ていても見つかりにくい場所となると、毎晩の寝床を探すのも一苦労だった。
 いっそ夜の”影”迎撃に使えそうな場所でそのまま寝泊まりしてしまえばいいのではという、乱暴だが合理的な結論に達するまでに、そう時間は要さなかった。
 廃墟然とした佇まいの建物に、真昼間からやってくる人などまずいないだろう。
 硬い地面にそのまま横たわることになるので、体は痛くなりそうだったが、贅沢は言っていられなかった。
 戦いやすい土地として確保されている各支部所定の迎撃地などには当然行けるはずはないので、代わりになるような人気のない、廃墟のような土地を苦労してようやく探し出した。
 ”影”の襲撃を受ければその都度、迅速かつ穏便に処理し、察知されないよう努めた。

 戦闘と言えば、僕は遂にみんなと一緒に戦う力を得た。
 ピロと名付けた僕の相棒。小動物の形をした武器である。
 僕のこれまでの無能ぶりが嘘のようによく働いてくれていた。
 他人事のような言い方になってしまうのは、事実他人事だからである。

 僕が直接手を下すわけではない。
 僕自身の身体能力など壊滅的すぎて、話にならない。
 僕は戦う代わりに、ただ、ピロにお願いするのである。
 ――目の前の敵を、倒してくれ、と。
 物理法則などまるで無視して、明らかに質量の保存など成り立っていないだろう滅茶苦茶な変形能力で、僕の浮かべる曖昧で漠然としたイメージに、正しく具体的な像を与えてくれる。
 とどのつまり僕は、ただなんとなくこんなことが起こってほしいとか、こんな結果になってほしいとか、考えるだけでいいのである。
 優秀すぎる武器によって、僕は僕自身を危険に晒すまでもなく、望む通りの攻撃を、防御さえも実現させられるようになった。
 無限の可能性を秘めたそれは、僕の思案次第でどんな形にもなり得る。
 ――と、主にアキくんが僕の武器について分析考察するのを横で聞いて、僕はこんな風に理解をしていた。

 何はともあれ、やっと手に入れた、念願の力だった。
 これでもう、僕は守られなくて済む。
 これでやっと、僕は守る側になれる。

 僕の心を確かな形に成さしめている、ロヴィへの想い。
 それを実現できることが嬉しかった。
 見ているこちらがハラハラするような戦い方をするアキくんの代わりに、速やかに敵を一掃してしまうことだってできた。
 シャロンさんに巡り合えるまで、何もアキくんが最前線に立って戦う必要はないのだから。
 そんな危険を冒して、万が一シャロンさんに再会する前に倒れてしまっては、元も子もなかった。






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