[通常モード] [URL送信]

お題小説
02:私は独りだった(柳幸/自慰)

強さが生む孤独に耐えれなくなる時があった。
歯に衣着せない子供の言葉の槍を受けて心が震えて涙が止まらない日もあった

勝利の優越感に浸る一方で離れていく友達に酷い孤独感を感じた

あの日もそうだった。
あの時の俺はまだ自分の歳を両手で表せれるくらいだった
その人知れず泣いていた俺にハンカチを差し出した彼

『どうしたの?どっか痛いの?』

『…う、ううん。ありがとう』

あの日の出会いから俺の中の全てが色づいていった
あれからもう何年?
俺はまた孤独感を抱えていた
そんなのきっと幻だ。現に仲間も友達も沢山いる。彼も、相変わらず俺のそばにいる
なのに、それなのにどうして…
孤独感が俺を蝕むんだ
一人ぼっち
どこを見たって人はいるのに、誰も俺を見ない
俺を見る視線はすり抜けて俺の背後の"神の子"を見てる

じゃあ、その"神の子"が消えてしまったら?


―〜♪〜♪〜♪〜♪―

「ッ!!」

突然携帯が鳴ったから驚いた。その音で俺は現実に帰ってくる
色素の薄い部屋
目の前にある七色の千羽鶴だけが場違いに垂れている

「…もしもし」

『俺だが、今日母親から美味しいと評判の和菓子を貰ったんだが』

「いいね。おいしそう」

彼はクールなんだと思う
見舞いにくるときはいつも何か理由をつけたがる
そんなの、いらないのに
けれどコレがないと彼は来てくれないんだろう。そう思うとなんだか少し寂しい気もする
いつから俺たちこんなんになったんだっけ?
あの時はまだ、手を差し伸べることにこじつけなんていらなかったのに。
友達という枠を外れてしまったから?
俺が自分の歳を両手じゃ数え切れなくなったから?

『では20分くらいで着く』

「うん。ありがとう」

1分にも満たない電話。ぼんやり待受に変わった携帯の画面を眺める
心も体も空っぽになった

体を横たえて重く息を吐いた
なぁ俺の背後にいた"神の子"さん。君は一体どこへ行ったの?
周りの人は俺じゃなくて君ばっかり見るから君のことは嫌いだけど、君がいないと誰も俺を見てくれないから、帰っておいでよ。
――勝手に脳が思考を始めたから焦った。
今そんなこと考えたら涙が出てしまう
(昔からそうだった。いつの間にか俺の背後に君はいて)
今から蓮二が来るんだから泣いてちゃダメだ
(周りの人はみんな揃いも揃って君を見るんだ)
だめだってば!ほら、視界がぼやける…
(認められるのはいつも君だった。俺はただ、心無い言葉の攻撃を受けただけ...)
あーもう、そんなこと考えたくないんだってば!

俺は声にならない声をあげてかぶりを振った
そしてゆっくりと自身へ手を伸ばす

「ん…は、ぁ…ッ」

ベッドに体を横たえたまま、背を丸めて自身を扱く
出来るだけ激しく思考を奪うように...
今だけは頭を真っ白にしていたかった
寂しいなんて、孤独だなんて思いたくない

「ぁ…れ、んッ…れんじ、っ……」

押し殺した声で夢中に彼の名前を呼ぶ
俺は彼が好きで好きで好きで、それなのに

「はぁッ、ん…ふ、ぁ……んっ」

自身を扱くのとは逆の手で口を塞ぐ
質量を増した自身は先端から涙を溢れさせている。
まるで俺の感情そのままだ
誰もみんな俺を見てくれない。けれど、彼だけは違うから。違うはずだから
脳内で情事を思い出して手を動かす
真っ白になった思考。理性も吹っ飛んでタガが外れて快感を貪るだけ

「んッ…くぅ……ふ、ぅ、ぅぁ…んッぁ、んン―――…ッッ!!!」

ティッシュの中に吐き出した精
自分を慰める度に心的にも身体的にも干からびていく錯覚がした

「はぁ、っ…れ、んじ…」

不意に世界が音を失って冷える
視界も手も吐き出した精も心臓もまるで液体窒素をぶっかけられたみたいに凍って
凍ったバラのように粉々に砕けそうな錯覚
それを形容する言葉あるのならきっと"淋しさ"なんだろう

「淋しくなんか…」

ぐしゃぐしゃに丸めたティッシュをゴミ箱に捨てて、布団を頭まで被る
胎児のように丸くなってたら扉をノックする音が聞こえた

「入るぞ」

「…いいよ」

扉の開く音がして、蓮二が何か言った
布団に遮られて聞こえない言葉
隔離された卵の中。俺は丸まってるんだ

「どうかしたのか?」

布団越しに頭をさすられて凍ってた心臓がいつもより速いペースで動き出した

「どっか痛いのか?」

あの時と、同じ言葉
布団から顔と片手を出す
蓮二の服を掴むと直接頭を撫でられて

「…う、ううん」

「そうか。なら――」

「ねぇ蓮二、俺を、幸村精市を――愛して?」

淋しくて淋しくて淋しくて、俺を見て欲しくて、俺という存在を見て欲しくて
"神の子"なんていなくてもいいって言って欲しくて
"神の子"がいなくたって俺は俺なんだって言って欲しくて
孤独を過去形にしたくて
全身で求める





「はぁ、ぁ、ぁぁッ…れん……ふぁ…れんっ、じ…」

脳内を白く犯す快感
握り締めたシーツは白く皺になっててスプリングがギシギシと悲鳴を上げる

「なんだ…ッ」

「も、っと…ぉ」

突き上げてもっと
さらなる快楽に溺れたいんだ
寂しさを紛らわせて、俺の存在を見て欲しくて自ら求める

「今日はやけに…っ、積極的だな」

情事の最中は俺を見るから
あいつはいないから。もっともっと、俺だけを見て

「れん…っ、すき、だ…ぁッ」

「ああ。俺もだ」

どうして

「れんじ…っ」

おれをみて

「んぁ、あぁぁッひ、ぁ…ふ、ぅぁ!」

さみしいよ


「――精市」

力を抜け、と耳元で囁かれてびくんっ、と体がはねた
耳を甘咬みされて熱い吐息と共に力が抜ける
次の瞬間

「んぁあぁっ…ふ、くふッ…くぅ、ぅぅうッ!!」

視界がブレて一気に蓮二の熱が最奥まで侵入して甲高い声が室内に響く
咄嗟に伸びてきた手が俺の口を塞いだ

「あまり声を出すな」

「ん、ぅ…む…んンっ!!ぅ、くふッ」

「精市。落ち着いて…といっても無理な話だな。そのままでいい。聞いてくれ」

容赦なんてほとんどなく突き上げる癖に。
快感に流されながら必死で耳を蓮二の方に集中させた
鼻同士を一度猫の挨拶のように擦り付けて、耳元で囁かれる
それだけなのに背に回した腕がびく、と震えた

「俺はお前が好きだ。お前しか見ていなかった」

彼は俺の欲しい言葉をくれる
それが美辞麗句なのか本気なのかはわからないけど

「ん…ふ、ぁ」

「"神の子"じゃなく、お前しか…」

それ以上の言葉をマトモに聞くことはできなかった
後から後から涙がこぼれてきて視界を滲ませて
言葉も出てこなくて俺は必死に回した両手で応えた
彼は変わらなかったのに
孤独だと思うのは、いつも隣にいた彼との間に病が立ちふさがったせいだって
ほんの少し俺が変わっただけなのに

「れん…っんぁ、ぁ、ひぅ!」

触れるだけのキスをして、蓮二の手が俺自身を撫でる
中枢神経をモロに刺激する快感
自分でするよりも遥かに気持ちよくて満たされていく

「俺の目を見ろ精市」

「んぁあっあ、は…っ、ふ、ぅんぁ」

「精市」

涙でぼやける視界。取り戻そうと目を擦ってれば俺自身を扱く手そのままに蓮二が逆の手で俺の手首を掴む

「んぁあぁっ!は、ぁ、ぁあっひぃ、ぁ、ぁあァ!」

ぐり、と弱点を抉られ腰が跳ねる
前も激しく扱かれて絶頂へのカウントダウンが始まる

「精市…ッ」

ようやく視界を取り戻す

「はっ、はぁ…ぁやッらめ、らッ…んッぁぁぁあ―――ッッ」

視線が交わった瞬間最奥を激しく穿たれて耐えられないほどの快感が俺を射抜く
びくびくと無意識に体は震えて白濁が舞う
二拍程遅れて蓮二が俺の最奥に精を吐き出した
注ぎ込まれる感覚
腹の奥がじんわり熱くなって、それを感じて俺は此処に在るんだって改めて認識する

「お前はもう独りではないと言っただろう?」





私は独りだった
(感じる孤独感は、君のせいだったのかな?)
(それとも"神の子"のせいだったのかな?)
(どちらにせよ過去形の孤独感に意味なんかない)








  あとがき

どうも管理人です
3月お題小説2つ目です

強さゆえ孤独っていいと思いませんか?
本当はもっと過去回想とか入れたかったのですが…。
それだけで1本小説かけそうなくらいだったので割愛です

子供の物言いってドストレートですよね
特に最近の子は…。

あと目を合わせてイクというのがなんともいえなかったんです←

幸村の過去考えてるの楽しいです
そういえば柳も小学生時代からテニスやってたんですよね。乾と。
引越しってことは東京にいたのかもしれませんが、何かしら出会っててくれれば嬉しいな、なんて





アンケート結果は以下の通りでした

3位:柳幸
投票:55票

投票してくださった全ての方々、本当にありがとうございました


それでは最後まで読んでくださりありがとうございました


※誤字・脱字・誤変換等ございましたらお手数ですがBBSまでお願いします。
 また、感想もお待ちしております。お気軽にどうぞ
 ※フリーリクエストも随時承っております。リクエストの際はこちらをご利用ください





[*前へ][次へ#]

12/55ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!