Tennis ★キスのサイン(跡幸/女装/モロ語) 「なんだ、結構似合うじゃねぇか」 涼やかな声と共に伸びてきた手が肩に触れて、体を反転させられる。 それから腰のリボン辺りをいじってまた正面に戻されて、スカイブルーの瞳が何度も頭から足元まで行ったり来たり。 「やっぱり取り寄せて正解だな。苦しくねぇか」 「苦しくはないけど、なんか落ち着かない」 「そりゃそうだろうな」 クツクツと喉の奥で笑いながら跡部は俺の服を色々調整する。 事の始まりは何だったか。 いつも唐突だから理由なんてほんの些細なことだし、考えるだけ無意味かもしれない。 現に俺はもう跡部の持ってきたメイド服に身を包んでしまっている。 今更何事もなく終わるわけもないだろう。 「はぁ」 溜息を吐けば顎を掴まれて無理やり視線を交えられた。 真っ直ぐとスカイブルーが俺の奥まで射抜く。 「なんだ」 「何も」 短い後ろ髪をリボンで束ねられて首元がすーす―する。 なんて思考を逸らしつつスカートの裾を掴めばにやりと跡部が笑った。 速く脱ぎ捨ててしまいたい衝動をぐっと堪えて視線で問うと跡部は俺の手を引きベッドに座る。 「それらしくしてみろ」 ほらきた。 「……、坊ちゃん?」 「バーカ。そうじゃねぇだろ」 「はいはい。何かご用でしょうか、跡部様」 「返事は一回。それと呼び方が違ぇだろ」 ワザとらしく溜息を吐かれて、もういっそ逃げ出したい。 掴まれた手は簡単には振りほどけやしない。 もっとも、振りほどく気もあまりないが。 こうなってしまえば、仕方ない。 「何かご用でしょうか、……っご、主人、様」 実際に声に出してみると違和感と恥ずかしさで一気に頬が熱くなった。 跡部は満足そうに目を細めて口の端で笑う。 「そうだな。喉が渇いた。飲ませてくれ」 「かしこまりました」 「嗚呼勿論、口移しでな」 手に持ったグラスを滑らせそうになって跡部を振り返る。 至極楽しそうなその笑みをどうにか辞めさせたいのに有効打も見つからなくてアイスティーの入ったグラスを持ったまま立ち尽くす。 跡部は笑みを伏せ、腕組をして急かすように威圧の視線を向けてくる。 「……っ」 ああもう。なるように成れ。 「んっ」 アイスティーを一口含んで唇を重ねる。 液体が零れないようにぴったりと隙間なく唇を重ねてその間で舌に乗せたアイスティーを流し込めば外気にさらされたうなじに手を掛けられびく、と体が跳ねた。 離れることも許されず、戸惑った舌を絡めとられ深いキスを交わす。 甘い。 舌の表面をなぞればアールグレイの味がした。 そしてそれは口の端から漏れて喉に伝う。 「っふ、ん……っはぁ」 「幸村」 熱っぽい視線に射ぬかれ胸の奥が切なく軋む。 結局のとこ、抗えやしないんだ。 再度唇を重ねようとして、跡部の指に阻まれる。 「もっとだ」 彼は、ずるい。 重ね損ねた唇を引き結んでもう一度アイスティーを口に含む。 さっきと同じ動作を繰り返して、やっぱり絡む舌。 そしてそれはグラスのアイスティーが半分になるまで続き、彼が満足する頃には喉のあたりは零れた雫で濡れていた。 せっかくの衣装も、だ。 タオルを取ろうと手を伸ばせばその手を掴まれて、跡部に視線を向けると意地悪く笑う顔。 「俺もべたべただ」 「だからタオル」 「そうだな。だが、別の方法がいい」 「はぁ?」 思わず本気で呆れた声が出てしまった。 そしてすぐに、しまったと口を手で塞ぐが、零れ落ちてしまった言葉は引っ込めることはできない。 「ほぉ。主人に向かって随分な態度だな」 「いや、あのこれは……っ」 顎を掴まれ無理やり視線を交えられて言葉が詰まる。 それをいいことに跡部はニヤリと笑いながら顎を捕らえていた手を俺の首に回し引き寄せた。 耳にかかる吐息がこそばゆい。 「お前は誰のものだ? 言ってみろ」 どくん。心臓が跳ねた。 「あ、跡部、様の……です」 それはきっと本心。惚れた弱みという奴だ。 耳に直接吹き込まれる言葉はまるで言霊のように俺を縛り、切なく胸の奥が軋む。 跡部の手が自らのシャツのボタンを上から2つはずし、露わになった濡れた肌に思わず喉が鳴る。 舐めろ、と耳元で囁かれ耳殻を甘噛みされて腰が砕けそうになるのを堪えむき出しになった肌に舌を這わせた。 甘い。 跡部のシャツに縋りつくようにして喉から鎖骨へ舌を這わせれば不意に、太腿を撫でる手の感覚。 「ふあ、あ、やめっ」 「続けろ」 「ううっ……ん、む」 太腿を撫でる手はするりと上がっていき、フリルの付いた下着の縁をなぞる。 勿論それも跡部が指定したものだ。 跡部は満足そうに鼻を鳴らすと全体を撫でフリルと肌の隙間に指を捻じ込み引っ張る。 「あ……ん、やめろ……っ」 「ほらまた」 咎めるように強めに内腿を引っ掻かれてびくりと腰が跳ねた。 柔い皮膚を爪で弱くなぞるように引っ掻きながら跡部は目を細めて意地悪く笑い、何事か呟く。 それを聞こうと視線を跡部に向けるが、不意にぐいと強い力で腕を引かれ視界が滑った。 スプリングの軋む音がすぐ傍で聞こえて、ベッドに放り投げられたと気付き肩越しに跡部を振り返ると意地の悪い笑みを浮かべた彼と目が合う。 「躾のなってねぇメイドにゃ仕置きが必要だな」 その笑みは冷たささえ感じるのに、何故か、ぶわりと体に熱がたまる感覚がした。 ** 「っは、あ……んっ、ぅあ……」 ぬちぬちと湿った音が聴覚を犯し、理性がぼろぼろと崩れていく感覚。 けれど、足りない。違う、これじゃない。 後部で蠢く指は酷くもどかしい。 「どうした?」 「あ、あ……った、り……ないっ」 跡部の視線は咎めるように冷たい。けれど、どうして? 体はかぁっと熱くなる。 自分の意思で動く指じゃもう。 「駄目だ」 もどかしくて足りなくて。空いた手を自身へ伸ばせばすぐに跡部に捕まってしまった。 腰に弱く溜まるだけの熱に浮かされながらどうして、と唇を動かす。 肌を擦るフリルにさえひくりと肌は跳ねるのに。欲しいのに。 「どうしたい?」 「っふ、あ……たりない、たり、ない……」 もっと。確かな熱が、欲しい。 「まだ2本しか入ってないぜ?」 「違っ……っ……ふ、もう……ごしゅ、じ……っさまのが、いい」 「俺の? 俺の、何だ」 どうやら彼は機嫌を良くしたらしい。愉悦に満ちた瞳がすうっと細められた。 瞬きをすると頬を伝う雫の感覚と引き換えに滲んだ視界が幾らかクリアになって、もどかしさに内部がきゅうと疼く。 汗で頬に張り付く髪を人差し指で優しく払いながら跡部は俺に問う。 はくはくと唇が空回る。 「ご主人、様のっは、ち……っ、ちんちんが、ほしい、です」 「どこに?」 頬を撫でた指が目尻に溜まった涙を掬い、跡部はその涙に口付けた。 また唇が空回る。羞恥心に融けてしまいそうだ。 声が酷く掠れているのがわかる。 「お、れのっ……」 言葉が出てこない。 縋るように跡部を見ても、その先を待つ視線のまま。 「おれ、の……おしり、っ……ねぇ、お、ねが……もう」 「もう?」 「もう、っ限界……なんでも、します、からぁ」 ぼろぼろと音を立てて理性が崩れる。 スプリングがぎしりと軋んで跡部がベッドの上にあがり、俺の頬を優しく撫でた。 嗚呼、ずるい。 「なら自分で入れてみろ」 言葉の意味を理解しかねて跡部を見上げるとクッションに背を預けた跡部に手を引かれ、慌ててスカートの裾を持ち上げる。 指が抜けて物足りなさがさらに下腹部から胸に這いあがってくる感覚。 震える指で跡部の股間を撫でるとそこは既に固くなっていた。 ふわりと頬が緩む。 「何か言うことは」 「あ……ん、ご主人様の、ちんちんをっ……俺の、おしりにください」 満足げに笑った跡部の反応を是と捉え、窮屈そうなズボンの前を寛げ熱く滾ったそれを取り出すと手の中でどくりと脈打つ。 きゅうとナカが切なく疼く。 「それで?」 「俺の、ナカ……ったくさん、突いて……ください」 数回撫でるように扱けば天を向いた跡部自身に手を添え、ゆっくりと腰を落としていく。 圧迫感に苛まれながらなんとか息を吐き出しゆっくりゆっくりと呑み込んでいくと、跡部もまた表情を歪めた。 俯く俺の顎を捕らえた手で半ば無理やり視線を交えられる。 「っ……!」 獣のような瞳。 「あ、っん……む、ぅ、んン」 その瞳に引き寄せられるように唇を重ね、獣のように貪り合う。 上顎を舌先で撫でられてふっと力が抜けた瞬間、跡部自身が俺の最奥を穿ち目の前がチカチカと爆ぜた。 太腿に爪を立てた指に促されるように腰を動かす。 「……っは、幸村」 「んっく……ごしゅじ、さま」 跡部が俺の名前を呼ぶ。大丈夫、わかるよ。 そう返す代わりに片手を跡部の手に重ねて、もう一度唇も重ねる。 最奥をがつがつと穿たれて閉じた瞼の裏に光がはためき、それと同時に襲い来る快楽。 「あ、あっん……おく、ばかりっ」 「嫌か?」 「ふぁっ、あ、あぁっ!」 緩く頭を振れば腰を持ち上げられ抜ける寸前のところから一気に落とされる。 迸る快楽の電流に一瞬意識が飛んだ。 「あつ、いっ……俺のナカ、ご主人様のっ、ちんちんで……いっぱいに、なってるっ」 緩んだ思考から嬌声に混じってほろほろと言葉が零れていく。 跡部は何も言わず、ただ僅かに優越の笑みを浮かべて俺を貪っていた。 「ひあっぁ、ぁああもっ、やぁ……は、げしっひぃぁあ!」 深い場所を穿たれ、弱い場所をぐりぐりと刺激されてどろどろと思考が融けていく。 肌を擦るフリルも布地も甘い刺激となって快楽を呼び寄せている。 そしていつしか絶頂ばかり求めていた。 まるで何かの暗示に掛けられたようにはやく、もっと、跡部が欲しいと、思考はそれで埋め尽くされてる。 「どうしてほしい?」 耳元で低く囁かれ、ぞくりと背が震える。 「ご、主人、様の……あっつい、せーえき……俺のナカに、ください」 「っ孕む、かもな」 そんなはず、ない、とは、考えれないほどだった。 視線を落とせば結合部を覆うスカート。一瞬、何か錯覚をした。 「んぁっ、あ、い……いい、ですっ」 スカートの裾を握りしめて跡部を見上げる。 「あ、赤ちゃん、できてもいい……からっ、俺のナカ、ご主人様のっ……ふあ、ぁっん! せーえきで、いっぱいにして……くださいっ」 「なら、零すんじゃねぇぞ」 「ひ、あぁっ、そこっん、ああ!!」 弱い場所ばかりを突き上げられて思わず腰が逃げる。 けれどそれを許さないとばかりに押さえつけられ快楽の濁流に易々と呑まれてしまう。 絡めた指に力を込めて絶頂を求める。 「幸村……っ」 「ああっひっイ、っちゃ……っひ、んぁあああ!! ――っ!」 バツン、と何かが千切れたように強い快楽によって絶頂に追いやられ、全身が跳ねる。 一瞬遅れてナカに熱い精が放たれ満たされたような気分になった。 余韻に浸りながら、くたりと跡部の胸に頬を擦り寄せれば、頭に置かれた手が髪を撫でる。 そして跡部は少し掠れた声で俺の名前を呼ぶ。 「んっ……ふ、あ」 そしてまた唇を重ねる。 彼がそう俺に教え込んだから。 キスのサイン (全部君が俺に教え込んだことだろう) (言葉にしなくたって何でもわかるよ) (君がそう俺に躾けたんだから) (俺は、君の命令には忠実だよ。多分ね) (だってそれくらい好きだから) あとがき どうも管理人です。 この作品は亞恋様のリクエスト作品です。 遅くなって大変申し訳ありません。 調教? 調教ってなんでしょう? ってなりながら書いてました。 これも一種の調教として……だめでしょうか? なんだかすっごい跡部が大好きな幸村君になっちゃいましたね。 前置きが長いのはやりとりが楽しかったからです。 そして毎回モロ語はなんだか恥ずかしくなってしまうのですが、今回はちょっとソフトめですかね? なんというかこう、表現というかなんて言わせたらいいのかわからなくって。 がっつりいく勇気がなくって申し訳ないです……。 それでは最後まで読んでくださりありがとうございました。 ※誤字・脱字・誤変換等ございましたらお手数ですがBBSまでお願いします。 また、感想もお待ちしております。お気軽にどうぞ ※この作品は亞恋様のみお持ち帰り可能です [*前へ][次へ#] [戻る] |