黒髪男子の惚気
ポッキーゲーム
「……はァ。まじかよ」
なんつって。オレは自らが招いた失態を嘆いた。
こちら深夜のコンビニで、山下のパシリを実行中です。無駄にでかいため息&独り言の哀愁っぷりにコンビニ前でたむろしてる若い子も絡んできません。
「はぁ……」
ずっとここに居ても仕方がないから、とりあえずオレは歩き出した。山下の家まで徒歩数分。酔いはもうすっかり醒めた。
足が慣れた道を勝手にたどって、指が慣れた部屋の番号を押して、見慣れたドアをあける。
山下はオレを玄関で出迎えると、この部屋を出たときと同じ仏頂面でオレを抱きしめてきた。
こんな時、かわいいと思ってしまうから不思議。
「やました、」
「……ちゃんと買ってきたんだろーな」
「おう」
名前を呼んで体を離させると、コンビニの袋を山下に押し付けて、オレは靴を脱いだ。山下はとっとと部屋に座ってて、オレもその横に座った。
「……」
無言で袋からソレを出そうとする山下に、心がぎゅっとしちゃうんから。その痛みを解放するにはこーするっきゃない気がして。
横顔の、くちびるの端っこに、ちゅーをしてみた。
「……は?なにそれ」
「ちゅー」
ぶは。一生懸命クールぶってんだけどこの山下。でも顔真っ赤ですよお兄さん。
「わざわざポッキーくわえんのめんどくさくね?」
「……うっざ」
笑ってやったら悪態ついてきた。そのくせ超絶笑顔で押し倒してくるってどーなの?笑える。
ゼミの呑み会で、飲んだ勢いでポッキーゲーム大会が始まった。組んだ後輩が無駄に燃えた結果、ポッキー折らずにちゅーされた。そう愚痴ったら、現在。
目をつむって山下のくちびるを受け入れてたら、カチリと小さい音がして。山下とオレの世界から電気が消える気配がした。
「ポッキーゲーム」-END-
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